点検 不動産利活用 持続可能社会への取り組み 一般財団法人 日本不動産研究所 第22回 空き物件を上質な空間に再生 北海道釧路市 利活用に成功した「釧路倶楽部」
住宅新報 2020年10月13日 号 12面
連載: 点検 不動産利活用
釧路市は、北海道の東部「道東」と呼ばれるエリアのうち太平洋岸に位置し、「釧路湿原」「阿寒摩周」の2つの国立公園をはじめとする雄大な自然に恵まれた街である。道東の中核・拠点都市として社会、経済、文化の中心的な機能を担い、総面積は1362.92平方キロで、05年に旧釧路市、旧阿寒町、旧音別町が合併して、現在の釧路市となった。主な産業は、酪農を主力とする豊かな農業、豊富な森林資源を有する林業、そして国内有数の水揚げ量を誇る水産業等のほか、大規模な食品・製薬工場や製紙工場、全国唯一の石炭鉱業所が操業し、地域の主力産業となっている。
また、東北海道の玄関口として道内地方空港には珍しく成田空港や関西国際空港との就航便がある。しかし、釧路市の人口は1984年以降は減少に転じ少子高齢化の影響を受けている。釧路市の商業地の地価も1993(平成5)年以降下落の一途をたどったが、近年インバウンドによる観光需要の影響で地価は上昇には至らないものの、ここ数年横ばいが続いている。そんな中、空き店舗の利活用で地域の話題となっているお店がある。「釧路倶楽部」だ。
釧路市の中心部はJR「釧路駅」と「幣舞橋」を結ぶ北大通りにある。その起点であるJR「釧路駅」は1961年に建設され、「札幌駅」をはじめ道内有数のターミナル駅が新駅舎に建て替えられる中、道内で現存する最後の「民衆駅」(駅舎の建設を国鉄と地元が共同で行い、その代わりに商業施設を設けた駅)として残っている。また、幣舞橋付近にある「釧路フィッシャーマンズワーフMOO(ムー)〈以下「MOO」〉」は、「民活法」(民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法)適用第1号として1989年に開業する。しかしその後、中核である大手百貨店の小型売店等の撤退を機に徐々に本州資本のテナントが抜ける中、地元資本や公共施設を中心に稼働を持続している。
釧路川を挟み「MOO」の対岸に「釧路倶楽部」はある。「世界三大夕日」の一つと言われている「釧路の夕日」や美しい夜景が見られる絶好のロケーションに位置する釧路倶楽部の建物は、かつては「東北海道日ソ友好会館」と呼ばれ、東北海道と旧ソ連邦が交流する重要な役割を果たした建物である。
しかし、国連海洋法条約の締結に向けた動きが顕著になり、各国200海里水域内での操業ができなくなり日本の漁業は大きな打撃を受けた。釧路港は水産基地として全国北方海域の漁船の水揚げ港として機能してきたが、この影響を受け水揚げ高は大きく減少した。この社会的背景を受け、本建物の日ソ友好会館としての機能は失われ、しばらく利用されることなく大きな椅子や調度品が残置され、立派な赤絨毯(じゅうたん)も誰の目に触れることなく数十年の月日が経過した。
絶景を生かす
この由緒ある建物の借景を生かしたフルリニューアルは17年に始められた。外国を思わせる絶景を受け入れるため、建築的に可能な限り窓を大きくし天井を抜いた。もともと残されていた大きな椅子は張り替えられ、窓際ソファー席として格別の特等席とした。赤絨毯はオールナットの無垢(むく)のフローリングに生まれ変わり、テーブル、椅子もオールナットの重厚感のある設(しつら)えとなった。その結果、釧路市内には今までになかった上質な空間が誕生した。
お店の片隅に目をやると不動産に関する難しい書籍が山積みとなっている。オーナーは30年以上にわたり不動産再開発のコンサルタントとして全国の再開発事業に携わってきた経歴を持つ。そういうオーナーの「釧路倶楽部」に空き店舗の利活用の成功事例を見た。釧路を訪れる際にはぜひ立ち寄ってみたいお店である。(北海道支社、不動産鑑定士・加涌康士)

























