点検 不動産利活用 持続可能社会への取り組み 一般財団法人 日本不動産研究所 第18回 リノベで地域のイメージを改善 秋田県秋田市 「倉庫」から「創庫」へ
住宅新報 2020年9月15日 号 12面
連載: 点検 不動産利活用
秋田市南通地区は、JR秋田駅の南西方に位置している。南通地区は幹線道路である「南大通り」を中心に、旧来からの商店街が形成されているが、地域経済の低迷や郊外型の大規模商業施設への顧客流出等により、商業地域としての機能は衰退し、空き店舗も目立つ状況であった。
この衰退気味であった南通地区の一角に存在する倉庫が、大規模改修(リノベーション)されたことをきっかけに、街の雰囲気は変貌を遂げつつある。
デザイン会社が着目
倉庫に目を付けたのは、秋田市内のデザイン会社である株式会社シービジョンズである。街の風景に存在していた古い「倉庫」を利用し、人のつながりや新しい活動を生み出す「創庫」として、様々なショップやオフィスを集めた複合施設「ヤマキウ南倉庫」を19年6月にオープンした。
「ヤマキウ南倉庫」は、1976年6月に建築された鉄骨造2階建てで、延べ床面積は1300m2の建物である。かつては酒類を保管する倉庫として利用されていたようだが、長らくの間、利用されていなかった。
「誰もが思うままに」
「ヤマキウ南倉庫」のコンセプトは「誰もが思うままに出入りできる、クリエイティブな複合施設」である。屋根付きの公園をイメージしたセンターホールでは、訪れた人が思うままに過ごせるパブリックスペースが形成され、イベントやセミナーを行うこともできる。1階と中2階にはセンターホールを囲うように計10区画のテナント施設があり、普段のスーパーとは品ぞろえの異なる食料品店やインテリアショップ、生花店、美容院などが入居している。2階は計6区画のテナント施設があり、設計事務所や税理士事務所などが入居し、そのほか様々な事業者がつながることを目的とした仕事場「コワーキングスペース」が設置されている。
シービジョンズは「ヤマキウ南倉庫」がオープンする以前も隣接ビルをリノベーションしており、1階に飲食店舗、2階以上はオフィスとして利用している。
エリアとしてリノベーションされた印象を受ける南通地区は、「ヤマキウ南倉庫」を核として、かつての風景を残したまま、良い意味で秋田らしくない魅力的な雰囲気をつくり出しており、その効果が相まって、南通地区には、おしゃれなカフェや飲食店が出店し、老若男女問わず、人々が集まる街へと変貌しつつある。
周辺にも好影響
南通地区の商業地域としての機能回復は、周辺地域にも好影響を与えている。南通地区周辺の住宅地域は、市内中心部に近く、立地条件には優れるものの、街並みに古さが見られるため、30~40代を中心とした住宅購入者層に敬遠されるエリアであったが、かつてのイメージが払しょくされたことから、住宅地域としての評価も見直されつつあり、地価も緩やかながら上昇傾向を示している。
数年前まで閑散とした状況にあった南通地区に人通りが見られる状況になった。古い街並みを生かしたまま、新しい価値を生み出し、地域のイメージが改善された好例である。(秋田支所、不動産鑑定士・平野太郎)
























