倉庫リノベーション ここがポイント! (6) 歴史の重層性
住宅新報 2020年9月15日 号 9面

出村亜希子氏
リノベーション物件の、新築物件に対する優位性。その最も大きなものはなんでしょうか。自由度の高さや汎用性。元倉庫であれば高い天井がもたらす大空間。様々なものが浮かびますが、実はコストとの折り合いがつけば、どれも新築で実現可能なものです。築古のリノベーション物件と最新機能を備えた新築物件を単純に機能のみで比較すれば、新築に軍配が上がるのは皆さんもご承知と思います。建築部材や設備、設計手法が進化していく一方、築年数を経た物件は経年変化していきます。年月の差は圧倒的です。規模や条件が同等であれば、築古物件は新築物件にかないません。
昨今ではちょっとした改装もリノベーションと呼ばれるようになりましたが、本来のリノベーションは、「新しい価値の創出」がなければ成り立たないものです。どんな「価値」を付加するか、あるいは見出すかという点にこそ、リノベーションの妙味があります。では新築物件には絶対に創出できない、リノベーション物件だけに現出する価値とはなんでしょうか。それは、建物が年月を経ることで獲得した歴史です。
例えば京都にある、とある小さなリノベーションホテル。もとは青果卸業者が建てた、野菜倉庫と従業員の寮として使われていたビルでした。これを改装し、地階の倉庫部分はギャラリー兼シェアスタジオとしてアーティストの活動の場に。1階は飲食・イベントスペース、宿泊フロント。空中階はホステルやシェアハウスとしています。若手芸術家が共同で宿泊・生活しながら作品を生み出すとともに、アートに興味を持つ人が集う場になることを目指して開設されました。






















