不動産市場異聞 大東建託賃貸未来研究所・AIDXラボ所長 麗澤大学AI・ビジネス研究センター客員准教授 宗 健 第26回 自動運転と街づくり
住宅新報 2020年9月15日 号 7面
連載: 不動産市場異聞
自動車各社は、自動運転の研究を積極的に行っている。乗用車だけではなく、トラックの自動運転も研究されている。また、規制の緩い低速・近距離移動の一人乗りについては、事業化が始まろうとしている。そして、自動運転は都市部よりも、公共交通機関が衰退して移動手段の確保が必要な高齢者の多い地方のほうが、街づくりへのインパクトが大きい。
自動運転の現状と課題
自動運転には、自動ブレーキや前のクルマについて走るレベル1から、完全自動運転のレベル5までがある。現在の日本で実用化されているのは、高速道路での自動運転が可能なレベル2だが、レベル2は正確には運転支援の範疇であり自動運転ではない。
レベル3から自動運転になるが、日本では、高速道路の渋滞中などの条件下で認められたばかりであり、今年中に対応車種が発売されるかどうか、という段階である。それでも国土交通省の資料では、25年を目処にレベル5の自動運転の製品化を目指すとしている。
自動運転については、技術開発と法律を含む制度整備の両方が進められている段階であり、条件が揃ったとしても、8000万台以上ある既存の自動車が自動運転車に切り替わるまでには、相当な時間がかかる。そのため、25年にある程度の実用化がなされたとしても、急に日本中の交通体系が一気に変わるわけではない。
自動運転が普及してくれば、電車に乗る必要がなくなるといった意見もあるようだが、都市部では道路容量や駐車場が十分ではなく、電車移動の人たちが自動運転車に移行すれば、道路は大渋滞すると予測されている。また、自動運転車がシェアサービスとして提供される場合には、整備・運行システム、課金システム、最適ルーティングなど、自動車単体としてではなくシステムとして運用される必要があり、解決すべき課題はまだまだ多い。
自動運転で街づくり
はどう変わるか
自動運転の導入初期段階で適しているのは、人口密度が低く、バスやタクシーが充分に維持されていない交通量の少ない地方になるだろう。このとき自動運転車は、個人所有ではなく、自治体や第三セクター、または、民間事業者による準公共交通として運用が始まる可能性が高いと考えられる。
自動運転に適した地方では、駅や市街地から離れた立地の住宅やアパートが批判の対象になることがあるが、それは都市居住者の感覚であって、クルマが移動手段の中心である地方では、地価の安い立地のほうが価格や家賃を安く抑えられるというメリットがある。
実際、通勤手段を見てみると、東京23区や政令市では通勤手段は鉄道・バスと徒歩・自転車の比率が高く、電車で通勤するか自宅近辺で働く人が多い。これが地方ではクルマの比率が最も高くなり、電車やバスへの依存度が低い。これは、自動運転が普及すれば、駅からの距離が関係無くなるといった簡単な話ではないことを示唆している。
今後、地方から自動運転が導入されれば、子どもや高齢者の移動手段が確保でき、飲食店の利用形態が変わるなど生活スタイルが変わっていく可能性がある。一方で、自動運転車の利便性がコンパクトシティに逆行する可能性もある。自動運転は、現在の延長ではない街づくりを考えることを要求しているとも言えるのだ。
そうたけし‥87年九州工業大学卒、リクルート入社。リクルートフォレントインシュア社長、リクルート住まい研究所長を経て現職。筑波大学博士(社会工学)・ITストラテジスト

























