地域が変わるインバウンド 交流人口増加がもたらす恩恵 143 古民家の空き家活用は親和性が高い(2) 愛媛・佐島の汐見の家は外国人にも人気宿
住宅新報 2020年9月8日 号 9面

小さな古民家なのに長屋門があり、雰囲気がある
とっさの方針転換に
この家はかつて、Nさんのご先祖が暮らしていた家である。Nさんは、空き家になって久しいこの家の処分のため12年、佐島に訪れた。実に30年ぶりだった。最初は、近隣の人に売却するつもりだった。ところが処分を撤回して、再生に舵を切り替えることにした。瀬戸内海の自然の素晴らしさを再認識して、単純に納屋となることが、この建物にとってベストの選択なのか疑問に思ったそうだ。
この家のかつての主、曽祖父が亡くなって40年経ち、その後、アメリカに移住して医者として成功した大叔父のロバートさんが引退して別荘として利用していた。その当時に比べるとすっかり荒れ果てていた。
古民家宿を目指す
残す方針に決めたものの、どうやって残すかを考えあぐね、インターネットで調べてみると、古民家再生というキーワードで、古民家宿という事例がいくつも出てきた。岡山県の倉敷にある中村功芳さんの「有隣庵」、徳島県の祖谷にあるアレックス・カーさんの「ちいおり」などの事例があった。また愛媛県古民家再生協会というサイトを見つけ、連絡をとって古民家鑑定をしてもらった。結論としては、再生可能であるということが明確になったが、プランや予算規模など可能性を模索していたため、具体的な設計がスタートするには、約2年後になった。
宿にする方針が決まり、工事が始まると、まず島外から大工さんが泊り込みでやってきて1カ月で一気に進んだ。更に長屋門の瓦の改修工事を検討していたところ、弓削島を歩いていたら、空き家の前に大量の古瓦を発見した。知人を介してお願いすると、快く譲ってもらうことができた。その上、五右衛門風呂の改修工事も実現した。
外国人がのんびり
客層は、車で大阪、京都など関西から来る人が多く、一方、東京方面も少なくない。コロナの影響前の時は、外国人も多いのが特徴だった。2割が外国人客で、エアービーアンドビーからの予約が一番多い。古民家の雰囲気を気に入り、京都などを訪ねてきて、帰国前にここでゆっくりするケースが何度もあった。外国人は古い建物を見て、素晴らしいと連呼していた。汐見の家に泊まって島の雰囲気を知り、更に島の人と仲良くなって移住するというパターンもあるそうだ。
佐島にとっては、かけがえのない場所になったようだ。






















