点検 不動産利活用 持続可能社会への取り組み 一般財団法人 日本不動産研究所 第4回 「日本のベニス」 富山県射水市 相次ぐ古民家活用の出店
住宅新報 2020年6月2日 号 12面
連載: 点検 不動産利活用
「日本のベニス」と称される地区が、富山県の中核市である富山市と高岡市に挟まれた射水市にある。射水市は平成17年に1市3町1村が合併して誕生した人口約9万2000人の都市で、北側は日本海に面し、南側にはなだらかな丘陵地が広がる。「日本のベニス」とは、海に近い旧新湊市中心部を流れる内川沿いの地区のことである。
内川地区は水面を小さな漁船が行き交う港町であり、その光景はゴンドラが運河をゆっくりと航行する優雅な情景に満ちた本場の「ベニス」に、ほんの少し似ていることから、「日本のベニス」と称されるようになった。
北前船の寄港地
内川は日本海に注ぐ河川で、中世頃から人や物資を運ぶ水路として利用されてきた。特に江戸時代は北前船の寄港地で様々な物資が流通する中継基地として、川沿いには廻船問屋や蔵、邸宅等が建ち並んでいた。このため内川地区には現在も廻船問屋として栄えた商人の邸宅や蔵が多く存在している。
古い歴史を有する内川地区だが、流通網の変化や漁業の衰退、地域住民の高齢化の進行等により、近年は通りを歩く人の姿は減る一方で空き家が増加するという、衰退傾向に陥っていた。ただ、ここにきて港町の風情が感じられ、かつての日本の原風景を見ることができる場所として注目されており、空き家を活用した飲食店等の出店が続いている。
建物の正面が六角形である元畳店を改装し始めたカフェ(六角堂)は、今や内川地区を代表する施設である。廻船商人の邸宅をリノベーションしたゲストハウス「内川の家 奈呉」や、アメリカ出身の移住者が経営するバー兼居宅等もある。今後も美容室やステンドグラスの工房等ができる予定であり、空き家となった古民家の活用が進んでいる。
空き家解消に注力
内川地区の活性化に当たっては、地元のNPO法人や商工会議所が、空き家の実態調査や空き家の所有者を対象とした相談会を開催している。空き家での音楽会等のイベント開催、歴史的な建造物の管理、移住・定住者の受け入れに関する支援活動にも携わっている。また地元のまちづくり会社も古民家を利用した飲食店や宿泊施設の企画や運営を行っており、空き家解消に積極的に取り組んでいる。
内川地区は市内の中でも空き家が多く、射水市の中で地価の下落が著しい地区の一つである。だが、こうした取り組みにより少しずつではあるが、地区に人通りが増え活気が感じられるようになってきている。
「日本のベニス」と名乗ることははばかられるが、歴史に根付いた古くからの建物を生かし、そこに長く住む住民を巻き込んでまちづくりを行っていく。派手さはないが一歩一歩着実に歩を進めることで、いつか「日本のベニス」ここにありと、堂々と名乗れる日がくることを期待したい。
(富山支所、不動産鑑定士・広瀬信之)


























