新型コロナで環境変化、チャレンジする人材求む 育成本格化する不動産企業
住宅新報 2020年4月28日 号 1面
三菱地所、無人島ビジネスを研究
三菱地所は、19年度から「10%ルール」を導入している。この制度は、業務時間の10%をビジネスモデル革新のための時間に充当し、その内容を人事評価制度と連動させるというもの。残業を含まない定時の10%に適用するが、厳密に10%としているわけではない。そのため、1週間の業務のうち特定曜日の午前中や毎日数時間ずつなど柔軟に運用している。
対象は、執行役員以上を除く本社および支社に勤務する全社員約800人で、対象となるすべての社員が利用している。新入社員から定年後再雇用社員まで多種多様だ。業務改善やネットワーク形成、社内へのフィードバックなどに時間を費やしている。
同ルールを実際にどのように活用したのか。業務改善に関しては、口頭で引き継ぎしていたマニュアル策定や定型業務のRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)化の検討などを行った。既存事業の強化や新規成長領域への進出のためにも同ルールを活用する。話題になりそうな研究テーマを決め、社外ヒアリングなどの結果を踏まえて成果を共有。部内でチーム分けし、現業と関連する分野の新領域での研究・提案や新規事業提案制度に応募するための時間に使うなど様々だ。
能動的な姿勢に変化
三菱地所に入社して3年目となるホテル事業部の佐々木悠人氏は、国内のホテル開発を通常業務として手掛けている。「10%ルール」を利用し、今のホテル事業に捉われない新ビジネスモデル革新を研究するチームに参加し、無人島をテーマに研究を行った。無人島というアセットにどのような魅力があり、三菱地所がどう貢献できるのかを考えるものだ。チームの会合と通常業務は対等なものと扱われ、双方の会議が重なるときもチームのほうに参加することができた。
調査をする中で、インフラがないまったくの無人島でビジネスを行うのは難しいと判断。元々は人が住んでいた無人島を実際に視察して、地元の人に案内してもらいながら話を聞いた。地元の人と一緒に島の価値を向上できるのかを考えることで、大規模リゾート開発とは別のビジネスの可能性を見いだすことができたと言う。佐々木氏は「何もないことが大きな価値なのではないか」と考えた。
このテーマに携わった3人のチームは、年齢も役職もバラバラ。研究に参加することで佐々木氏は、自分からテーマを探して能動的に取り組むという姿勢が身に付いたと言う。
三井不動産、中堅社員の起業支援
不動産会社は、組織を担う中堅社員も変革を起こす人材として育成を試みる。三井不動産は、日本とニュージーランドで生食用ぶどうを生産・販売する社内ベンチャー企業「株式会社GREENCOLLAR(グリーンカラー)」を設立した。大手不動産会社では異色の事業は、部署も年齢も異なる3人の社員が新規事業提案制度で立ち上げた。
同制度は、18年度から開始されたもので、三井不動産グループ内で新規事業案を募集し、採用された場合は提案者自らが責任者として事業を実施する。三井不動産ホテルマネジメントに出向していた小泉慎氏、三井不動産商業マネジメントに出向していた大場修氏、商業施設本部でアウトレット施設のリーシングを担当していた鏑木裕介氏が提案。現在、3人はグリーンカラーの代表取締役を務める。小泉氏と大場氏は50代、鏑木氏は30代半ばと年齢も異なるが、かつて同じ部署に所属し、当時検討していたぶどう生産を事業化した。
鏑木氏は、グリーンカラーの経営管理を担当。経営全般を見ることになったのは、今回が初めてだが、これまで経験した業務はすべてグリーンカラーの仕事に役立っているという。また、これまでよりも裁量が大きい半面、責任も大きくやりがいと共にプレッシャーも感じている。
あるテナントから今回パートナーとなっている葡萄専心(株)の樋口哲也社長を紹介されたことが提案のきっかけ。提案をまとめる時間をつくるために、効率的な仕事の仕方を工夫した。また、社内のIT環境が整い、3人の部署が違っても連絡を密に取れたことも大きかった。鏑木氏は、今回の事業で仕事と余暇を融合させたライフスタイルの提案を行いたかったと言う。これは、三井不動産が行っているより良いオフィスや住宅などの提案にも通じると話す。
人材育成の一つの潮流へ
両社以外でもチャレンジする人材を育成する動きはある。野村不動産や東京建物も多様な人材の育成制度を検討中。「ウィズ・コロナ」「アフター・コロナ」を見据えると、不動産業界においてチャレンジする人材の育成は一つの潮流となりそうだ。
























