改正民法で何が変わる 監修・東京グリーン法律事務所 弁護士 伊豆 隆義 ▶(9) 不履行軽微だと解除できず
住宅新報 2020年3月17日 号 3面

溝田紘子弁護士
催告解除の要件
賃借人が賃料を支払わない場合、賃貸人は、賃料を支払うよう履行を催告した上で、催告から相当期間を経過しても履行されない場合に、契約解除ができます。この点、判例は、賃貸借契約は、双方の信頼関係が破壊されたとまでは言えない場合には、解除は認められないとしてきました(最判昭和27年4月25日民集6巻4号451頁)。しかし、従来は、この点について、明文の規定がありませんでした。
今回の民法改正によって、新法は、債務の不履行が軽微である場合には、契約を解除できないことを明文化しました(改正法541条但書)。今後は、催告解除をする場合、相当回数(裁判例などでは、3回以上で解除を認めるものが多いように思われます)の不払いが繰り返され、信頼関係が破壊されていること(債務不履行が軽微ではないこと)をも指摘するべきです。
無催告解除ができる場合
更に、長期間賃料が支払われない場合など、信頼関係の破壊が甚だしい場合、判例は、賃貸借契約の無催告解除を認めています(約9年10カ月の賃料不払いにつき無催告解除を認めた例として、最判昭和49年4月26日民集28巻3号467頁)。この点も従来は、明文の規定がなく、長期間不払いの事例でも念のため催告をしておくことが多かったように思われます。今回の改正によって、「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき」には、無催告で解除できることが明文化され(改正法542条1項5号)、この点が変わってくる可能性があります。
◇ ◇
判例では、契約違反が軽微な場合、催告しても解除できず、甚だしい信頼関係破壊があり、催告をしても履行の見込みがないときは、無催告解除ができるとしてきました。
改正によってこれらの点が明文化されました。催告解除をする場合は、新法で「軽微な場合」は解除できないことが法文で明示され、「軽微でないこと」、例えば、当月賃料不払いがあることのほかに、過去の賃料の不払いや滞納等を主張することが必要と思われます。
なお、無催告解除について、「直ちに解除できる」との(無催告解除特約)を定めている契約も見受けられます。しかし、判例は、このような特約があっても、契約違反が重大であるなど、催告なしで解除することが不合理とは言えない場合にしか解除できないものとしています(最判昭和50年11月6日金法782号27頁など)。
新法では、無催告解除が認められる場合が明文化され、契約違反が軽微である場合には催告解除すらできないこととされました。判例法理は新法後も生きており、無催告解除特約が定められていたとしても、賃借人の違反が軽微な場合は、解除することはできないことは、今後も変わらないと思われます。
みぞた・ひろこ=司法研修所新72期・2019年弁護士登録 東京弁護士会、立命館大学卒・京都大学法科大学院修了。取り扱い分野=民事・家事・不動産・労働・刑事






















