住宅金融支援機構、シニア向け住宅ローン 「リ・バース60」利用が急増 ノンリコース型が人気
住宅新報 2020年3月17日 号 1面
住宅金融支援機構の「リ・バース60」は、〝リバースモーゲージ型〟住宅ローン。毎月の支払いは利息のみで元金は亡くなった時に対象物件を売却することで一括返済する点では一般的なリバースモーゲージと同じ。ただ、現在住んでいる自宅だけでなく新たに所有する住宅でも抵当権を設定でき、ノンリコース型も利用できる点が特徴だ。
ノンリコース型は亡くなった時の売却代金でローンを完済しきれない場合でも、相続人に残債務が請求されない方式のことで、ローンを組む親としては「子供に迷惑をかけてしまうのでは」という心配がない。そのためノンリコース型を導入した17年4月以降、同ローンの利用件数は大幅に伸び、18年度の申請戸数は前年度比約3倍の511戸、19年度は同約2倍の1000戸に達する勢いだ(グラフ(上))。そしてその9割がノンリコース型を選択している。
同機構住宅融資保険部リ・バース60推進グループ主任調査役の植村竜也氏は、「ノンリコース型の導入を機に取り扱い金融機関が増えた。顧客と接する住宅事業者にも認知度が高まったことが大きい」と急増の理由を挙げる。
利用者の平均年齢は70歳だが、資金の使い道(グラフ(下))としては「戸建て新築」と「新築マンション購入」という新しい住宅取得が5割を占める。今年度はリフォーム目的が増加。リフォーム事業者が営業ツールとして「リ・バース60」を活用し、例えば月に数千円の返済負担でリフォームが可能であるという提案が受け入れられたようだ。
同機構は毎年のように「リ・バース60」の商品改定も進めている。セカンドハウス購入にも使えるようにした。
また、これまでは親が亡くなった後、相続人は売却か一括返済かという二択しかなかったが、4月以降はその家を手放したくない場合には、「リ・バース60」を利用して分割返済できるようにする。
同ローンの取り扱い金融機関数は現在、全国59機関。
りそな銀、富裕層が7割
その取り扱い金融機関の一つである、りそな銀行では現在、ノンリコース型に特化し、「あんしん革命」の商品名で販売している。年間20~30件の契約がある。その6~7割がいわゆる富裕層で、資金の使い道としてはシニア向け分譲マンションの購入費だ。同行ローン事業部グループリーダーの柳原英典氏は、「強い需要を感じる」と話す。
シニア向け分譲マンションの多くは手厚い日常サービスが付いており、住み始めてからはそのサービス費も毎月の支出となるため、ある程度資金的に余裕のある人が対象にになる。ただ、富裕層以外にも広がる兆しは感じている。昨年のお盆時期に、同行の既存顧客に「あんしん革命」の案内を郵送したところ、「相談が殺到した」(柳原氏)と言う。帰省した子供と話し合い、「自宅は子供に残さなくてもよいという結論に達したようだ」と話す。
ごく普通のサラリーマン世帯は、リタイア後は退職金でそれまでのローンを返済し、後は年金と預貯金で暮らしていくのが一般的。年を重ねると、介護や病気などでいつ現金が必要になるか分からない。ある程度は手元に現金を残しておきたい。「リ・バース60」で既存の住宅ローンの借り換えをし、退職金はプールしておく選択も可能だ。
現在、「リ・バース60」で調達した資金の使い道は住宅関係に限られる。顧客からは生活資金などに利用したいという声もあるという。
「様々な形で自宅をキャッシュ化するニーズは今後ますます増えるとみている。将来的には自前の商品としてリバースモーゲージ開発も視野に入れている」と話す。
コスモスイニシア シニアM全国展開へ
こうした新たな高齢者の資金調達手法を、シニア向け分譲マンション供給を手掛けるディベロッパーはどのように見ているのか。
コスモスイニシアは、16年にアクティブシニア向け分譲マンション第1弾「グランコスモ武蔵浦和」(埼玉県さいたま市)を発売した。全160戸を約2年で完売。同社シニア事業部の山本一馬氏(コスモスライフサポート部長)は、「当時は現金派が圧倒的。自分の資産の範囲で買える部屋を買う、富裕層が多く、とりあえず買って住んでみる、という感覚の人が多かった。この年になってローンを組むのは負担、面倒なことはしたくないという感覚だ。ただ、5年後、10年後、ローンに対する感覚が大きく変わっていく可能性はある」と述べる。
同社は今後、全国各地でシニア向け分譲マンションを展開する方針だ。札幌や福井などで計画している。いずれも駅前の市街地再開発事業内の好立地。その最大のコンセプトは〝安心して楽しむ〟。運営するコスモスライフサポートのスタッフが常駐し、日頃から適度な距離感で接してくれるので安心して暮らすことができる。
高齢者が第2の人生を楽しむための住まいを返済の不安なしに手に入れることができる金融商品の登場は、住宅・不動産事業者にとって新たな武器になる可能性がある。

























