地域ごとに一定の需要 多様な働き方へ官も本腰
住宅新報 2020年1月7日 号 23面
離島のハンデから魅力ある働き方へ
沖縄県宮古島市は、サテライトオフィスやコワーキングスペースなどを備えた「宮古島ICT交流センター」を19年10月1日に開設し、運営を行っている。同センターは、下地庁舎(宮古島市下地字上地472番39)の3階。05年の市町村合併前は旧下地町役場の議場だったが、合併後使われていなかった。市は、サテライトオフィスの誘致の調査を行い、総務省補助事業「ふるさとテレワーク推進事業」の交付が決定したことを受け、市も併設のコワーキングスペースの整備を進めた。
旧議場をリノベーションし、広さは約787m2。Wi-Fi等を完備。サテライトオフィスの入居者やコワーキングスペースの法人利用には、法人登記や住所登録も無料でできる。
サテライトオフィスは4室(約14~26m2)で、月額料金は1万7000~3万1000円(電気代等別)。利用対象は、ICT企業やスタートアップ企業(起業予定も可)。既に3室が入居し、残り1室も応募があり、入居審査中だ。宮古島は現在、建設ラッシュの影響(工事関係者の宿舎需要の増大)で不動産バブルの状態であり、同施設は民間物件と比べるとかなり賃料を安く設定している。
コワーキングスペースは56席。利用者は、個室席(6席)とテレビ電話などに使えるフォンブース(3室)が無料で利用できる。料金は、個人利用は3時間550円と1日1100円。法人利用は同時に5人まで利用可能で、年間契約で11万円。2法人が契約している。
このほか、ミーティングルーム(2室、1時間3300円)、シャワールームも備えている。
ネット回線の高速化がきっかけ
沖縄県が17年度から、宮古島に本格的に光ブロードバンドネットワークの整備を開始し、通信回線の向上で職種によっては都会と変わらない仕事が可能になってきている。同センターの整備は、市庁舎の有効活用と自然環境の良さを生かして、宮古島だからこそできる働き方や暮らし方を推進している。
宮古島市企画政策部情報政策課の山崎紀彰主任主事は、同センターはICTの人材育成や拠点整備、産業振興を視野に入れて始まった事業と説明し、「サテライトオフィスの島外企業と、地元の企業や住民との接点となる交流拠点になってほしい」と話した。
起業から雇用創出へ
千葉県松戸市は19年4月、松戸駅前徒歩3分のビル(松戸市松戸1307の1 松戸ビルヂング13階)にインキュベーション(起業支援)・コワーキング施設「松戸スタートアップオフィス」を開設した。広さは約210m2。
オープンから半年で、個室ブース(定員2~3人、月額3万8000円より)6室と、ブースプラン(同1人、月額1万8000円)5席が満室になった。市内で起業予定もしくは起業5年以内の人が対象で、共に24時間利用可能。
利用者制限のないコワーキングスペースは30席。利用時間は午前9時~午後9時で、料金は1時間300円。全ての利用者が、オプションで法人登記や住所登録が可能だ。
インキュベーションマネジャー(起業支援の専門家)による無料サポートも行っている。同市経済振興部商工振興課の丸山慎次主任主事は、同施設について「個室ブースの賃料を相場より安く設定することで、松戸市内で起業する方や企業を増やし、雇用の創出につなげたい。また、駅周辺のにぎわいと、市内経済の活性化も目的だ」と説明した。
品川区は2カ所整備
東京都品川区では、15年にコワーキングスペースを備えた品川産業支援交流施設「SHIP」を開設し、19年10月1日に区内2カ所目となる区立のコワーキングスペースを武蔵小山創業支援センター内にオープンしている。
「SHIP」(品川区北品川5の5の15 大崎ブライトコア4階)は、コワーキングスペース(約120席)や貸しオフィス、貸し会議室、3Dプリンターや測定顕微鏡などの機器を備えた工房、多目的ルームなどを備えている。
武蔵小山創業支援センター(品川区小山3の27の5)内のコワーキングスペースは、定員10人ながらインキュベーションマネジャーを2人配置し、起業支援にも力を入れている。女性利用を考慮し、ベビーカーでの入室も可能。月額料金は5000円。
品川区地域振興部商業・ものづくり課の笠原浩司主査は、区では起業しやすい環境づくりのため、ハード面に加えてソフト面の充実を図っていると説明し、「『起業するなら品川区』と区内外から創業者を呼び込み、区内産業の活性化につなげていきたい」と述べた。
誰もが働きやすい環境を
シェアオフィスやコワーキング施設は、官民問わずおおむね利用率が高いところが多く、駅や地域ごとに一定数の需要があることが分かる。
その背景には、インターネットの高速回線の普及とデータのデジタル化、宅配便など物流機能の向上がある。実際、データの送受信ができれば、毎日通勤せずとも仕事ができる職種が増えてきている。フリーランスや個人企業で、ウェブサイトの制作などのIT関係やデザイナー、イラストレーター、ライターなどの職種がそうだ。
会社で机を並べて働くスタイルが主流なのは、近年の大企業の本社が再開発ビルへの移転事例が多いことからも動かない。一方で、子育てや介護などで通勤が難しい、自宅以外の仕事場が欲しい、セキュリティのために自宅以外の住所が欲しい、といった事情やニーズも出てきている。
行政や民間が施設を整備する理由は様々だが、誰もが働きやすい環境の提供という点は共通している。五輪後の不動産市場では、多様な働き方への対応が求められる。

























