五輪後 インバウンド 全国各地へ広がる恩恵
住宅新報 2020年1月7日 号 20面

2013年12月に訪日外国人観光客数の初の1000万人突破を受け、成田空港では太田国土交通大臣(当時)もお祝いにかけつけた。その後、まさか3000万人を超えるまでになるとは……
起点は東京誘致
今年は遂に、東京オリンピック・イヤーだ。これは、インバウンド(訪日観光)関係者にとっては、待ちに待った大会と言えそうだ。インバウンドを10年以上にわたって取材してきた中で、オリンピックの開催が決まった13年こそが、インバウンドのターニングポイントだったからだと思う。
13年は、その12月に初めて1000万人に到達した記念すべき年である。インバウンドを国家プロジェクトとしてスタートしたのが、小泉政権時の03年で、当時わずか約521万人だった訪日数を「10年に訪日外国人を1000万人」と観光立国を宣言した。なかなか、到達できなかった中で、11年には東日本大震災が起き、翌12年には尖閣諸島問題による中国人の訪日自粛と続き、すっかりインバウンドは冷めきっていた。
ところが、13年のIOC総会でオリンピック・パラリンピックの東京開催が決定し、潮目が大きく変わった。それまでインバウンドに消極的だった業界も、雪崩を打ったように、変化していった。インバウンドに乗り遅れまいという様相だ。同年の訪日数1000万人突破も追い風となった。
インバウンド成功が地価にも好影響
この頃から、国もインバウンドにかける予算を増やし、ビザの緩和策もあって、訪日数が毎年前年比を上回っていったのだ。これまでの本紙コラム連載に掲載してきたように、日本全国で様々な取り組みが活発化した。
また観光地としての盛り上がりは、地価上昇にも直結していき、インバウンド需要が高いエリアは、比較的持ち直している。
特に北海道のニセコに至っては、バブル期よりもはるかに高値の地価で推移している。ニセコの不動産会社に聞いたところ、コンドミニアムであれば、2LDKで5000万円から、3LDKで7000万円から、ペントハウスだと1億円から3億円で購入されているそうだ。
沖縄も観光地として多くの外国人を受け入れている。沖縄県内の19年公示地価が13年から6年連続で上昇し、住宅地、商業地、工業地とも全国一の伸び率となった。
その他、富士山観光の起点である河口湖では、地価が3年前に遂にV字回復。また都内の銀座ではバブル期よりも高値で推移しているという。いずれも訪日観光で人気のスポットが多く顔をそろえる。
空き家活用の期待も
今後は、オリンピックを通過点と捉え、訪日5000万人も夢ではないという声も聞こえる。その根拠となるのが、アジアの経済発展だ。中国で海外旅行の未経験者は、依然多く、インドネシアの人口も日本の倍以上もいるなど、アジアのポテンシャルは高く、地理的アドバンテージがある。また、リピート客も十分期待できる。リピートする外国人旅行者に話を聞くと、北は北海道から南は沖縄まで、まったく異なる気候風土があり、何度行っても飽きることがないそうだ。
ローカル体験できる小規模施設に空き家活用 しかし、今後、訪日の人数ばかりを追いかけるのは、いかがかと思う。
京都では、観光客が増え過ぎて、観光公害という言葉が生まれたほど、一般市民への影響も高い。やはり東京・関西圏の一極集中から地方分散の施策もインバウンドには必要だろう。その中で期待されるのが民泊や小規模旅館などだ。外国人旅行者のニーズは今後ますます多様化していくだろうし、その受け皿となる魅力的な宿が地方には少ない。ニッチなニーズに応える小規模施設が望ましく、空き家活用も可能だ。
欧米では、日常の地元の暮らしにフォーカスしたローカル体験に注目が集まっている。決して立派な観光地である必要はなく、魅力の掘り起こしが必要だ。その地域にしかないオリジナリティの高い物語を訴求できるかどうかが重要だ。地方を含め、国全体でインバウンドの恩恵を受ける時代が、オリンピック以降にやって来ると期待している。
(ライター/インバウンドコンサルタント 此松武彦)






















