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スタンダード会員限定残したい情景~文化的歴史的所産を巡る~ 第32回 熊本県熊本市 一般財団法人 日本不動産研究所 レトロモダンな新町・古町 町屋存続へ助成と住民活動

総合
  • 熊本城と熊本駅の間に位置する新町・古町地区

    1 / 3熊本城と熊本駅の間に位置する新町・古町地区

  • 物流拠点として発展した古町の今の町並み

    2 / 3物流拠点として発展した古町の今の町並み

  • 新呉服橋から眺めた坪井川

    3 / 3新呉服橋から眺めた坪井川

 熊本市は人口約74万人を有する熊本県の県庁所在地で、熊本城の城下町として発展してきた。12(平成24)年4月に政令市に移行し、16(平成28)年熊本地震で毀損した建物の再建築も相まって、熊本市役所周辺の中心市街地の高度利用化が加速している。中心市街地及びその周辺は、都市計画法の商業地域で、容積率が400%・600%に指定されている。そのため、アジアを中心としたインバウンド需要を取り込もうとするホテル需要が旺盛であり、近年稀にみるホテル建設ラッシュで、建物の建て替えが活発化し、新しい建物による町並みが増えてきている。

高値取引も散見

 しかし、そのような市場の流れから逆らうような動きをしている地区が存在する。新町・古町地区である。古町地区は、碁盤目状に区画された一町一寺の町人町として建設され、細工町・呉服町・鍛冶屋町・大工町など職名が記された町で構成され、坪井川の荷揚げ場を有する問屋が軒を連ねた物流の拠点として発展した地区であった。新町地区は、加藤清正が、古町の碁盤目状に対して、新たなプランとして、南北に長い短冊形に区画された熊本城の玄関口として建築された武家屋敷と町人町が混在する地区であった。両地区は、熊本城と熊本駅の中間に位置し、加藤清正による熊本城の築城と共に建設に着手された、商業地と住宅地が混在し、レトロモダンな建物を残している町屋としての町並みが楽しめる地区である。

 しかし、モータリゼーションの発達によるイオンなどの郊外型大型商業店舗の台頭、職人の後継者不足などによる小売業・卸売業・製造業の衰退による空き家化、地理的位置並びに近時のインバウンド需要及びマンション需要を背景に、地価公示価格などの公的評価価格の数倍の値段での取引が散見され、高層マンションが建築されている。このままの状況が続くと、以前からの町屋としての町並みの維持は難しくなる。

将来世代に残す

 そこで、町並みの維持を図るため、住民は、昔ながらの建物の外観を活かした飲食店へのリノベーションや、町屋の町並み散策のガイドなどを行っている。熊本市は、12(平成24)年に町並みづくりガイドラインを策定し、町屋を主とした伝統的様式建造物の保存・修景への助成やモデル街区に認定された通りの一般建造物の町並みに合わせた修景への助成を行うなどを行っている。

 このように、自分たちが生まれ育ってきた地元の町並みを将来世代に残すために、現存する建物を活かした地域活性化を模索し、行動している。昔ながらの建物を目にすることにより、ノスタルジーの世界に入り込めるような地区が、今後とも残ることを切に願う。

 今年も残すところわずかだが、来年は第32回オリンピック競技大会が東京を中心に行われ、全世界より日本に人が集まることから、補修中の熊本城のほか、周辺観光の一つとして、新町・古町地区を散策されてはいかがだろうか。(熊本支所/不動産鑑定士・田上英憲)

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