首都圏・秋の賃貸住宅市況 購入控え 更新にシフト 10カ月連続で成約減少
住宅新報 2019年11月5日 号 1面

首都圏全体の成約件数は減少したが、外国人の入居や空室待ちに関する問い合わせが増加したエリアもあった(写真は北千住駅)
高い入居率続く
アットホーム不動産情報ネットワークに登録され成約した首都圏(1都3県)の居住用賃貸物件によると、9月の成約件数は1万4970件。前年同月比7.0%減少し、18年12月から10カ月連続のマイナスとなった。首都圏全エリアでのマイナスが5カ月連続となる一方、首都圏全体のマイナス幅は5カ月ぶりに一桁台に縮小した。
エリア別では、直近3カ月(7~9月)の成約件数は埼玉県と神奈川県で回復の兆しがうかがえる。特に埼玉県のアパートは7月、8月の2カ月連続で前年同月を上回った。神奈川県は前年同月比2.4%減で、マイナス幅が他のエリアより縮小しており、「マンションのほうで比較的回復傾向が見えてきた。シングル向けで前年超えが目立つ」とアットホームラボ(株)データマーケティング部長の磐前淳子氏。同社は、アットホームのAI開発・データ分析部門が独立し今年5月に発足した。足元の市況について磐前氏は「住み替えしながら、住まいをグレードアップできる層、できない層の二極化が顕著。地場の不動産会社からも今は契約更新の声が多い」と指摘する。
リクルート住まいカンパニーの池本洋一氏(「スーモ」編集長)も管理会社好調の市況と見る。首都圏の賃貸市況について「分譲の高止まりと共に、賃料も上昇しているため、現在と同等以上のスペックの部屋に住み替えると家賃が上がってしまう。入居率90%以上の管理会社もある」と述べ、人口増加地域では高入居率が続くと予測する。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)は10月28日、19年の『不動産情報サイト利用者意識に関する調査』(12面に関連記事)を公表した。それによると、『住み替えの検討理由』で最も多いのは売買・賃貸検討者共に「ライフステージの変化」となり、ユーザーは「住みたい暮らしの実現」よりも、生活変化に伴う選択をしていることが分かった。加えて、同調査では物件契約までの〝契約期間の長期化〟が売買・賃貸共に如実に現れており、賃貸から売買へ移行する層も限定的といえるかもしれない。
面積帯で傾向異なる
成約賃料の動きはどうか。アットホームでは、(1)1戸当たり、(2)1m2当たりの2種類に着目。(1)では9月こそ東京23区の上昇によりマンションが9.07万円(前年同月比1.6%上昇)で4カ月ぶりのプラスとなったが、成約面積は毎月のように縮小傾向にあるため、戸当たり賃料は下落基調が続く。
(2)の1m2当たりの成約賃料は上昇基調にあるものの、面積帯によって様相が異なる点が特徴だ。特にこの1年間の賃料指数の推移を面積帯別で見ると、シングル向けでは前年同月比プラスとなる月の回数が多いのに対し、カップル向け・ファミリー向けではそれぞれ直近8カ月連続マイナスとなっている。
東京カンテイ市場調査部上席主任研究員の井出武氏は、分譲マンション賃料の動きから「募集賃料は18年後半以降、千代田・港・渋谷の3区が強くけん引する形で上昇。投資マネーの流入が顕著だったが、利回りの低下などを背景に19 年に入りピーク時から落ち、投資家の様子見が続いている」と指摘。他方、城東エリアでの募集賃料の上昇および事例数の増加を示し、「物件を安く購入できるため、低金利ながら相応の利回りを追求できるエリアと見ているのだろう」と分析する。
東京五輪に高まる期待 建て替え、外国人入居に動きの声も
地場の不動産会社の景況感も見てみよう。『住宅新報』が主要路線の各駅でヒアリングしたところ、「都心部ではニーズに対して空き物件が少ないため、〝賃料上昇〟でも成約している」(都営三田線白金台駅、白山駅など)があれば、「築古アパートの建て替えにより物件を探している人が増加した」(東京メトロ東西線浦安駅)、「外国人の入居に関する客付会社からの問い合わせ数が1.5倍になった」(小田急線町田駅)など、様々な動きが見られた。
「IT重説」浸透に差
IT重説の実施状況については「対面による本人確認が基本」や「必要性を感じていない」などの意見が目立つ中、「そもそもユーザーの認知度が低いため個社で手を打ちにくい」といった声も複数聞かれた。他方、既に導入済みの不動産会社では「一定の実績もあり、電子契約まで進むのは歓迎」(京王線多摩センター駅)や「台風のため来店できないところ、IT重説で対応できた」(京王線府中駅)などのほか、「秋は急な転勤の決定によって短期間での物件探しが求められるため、〝時短〟の面からも導入を検討すべき」(京王線多摩センター駅)といった前向きな意見もあった。
インターネットによる不動産評価等を行うタスの新事業開発部長、藤井和之氏(6面に関連記事)は「アパートローン融資の過熱が終わり、賃貸市況に落ち着きが見えつつある」とした上で、「収益性の低いアパート物件から淘汰される。東京市部では大学キャンパスの都心回帰などもあり、単身者が移動した後の対策が必要」と警鐘を鳴らす。
他方、アットホーム不動産情報ネットワークの中では、千葉県や東京23区などを中心に現状維持あるいは上向きとの受け止めが多いようだ。例えば、東京五輪を契機とし、「五輪期間中に企業のリモートワークが進めば、『人気エリアの見直しや通勤重視とは異なる選択肢も定着する可能性がある』といったこれまでにない声も出てきた」(アットホームラボの磐前氏)など、地場では期待と不安が入り混じっているようだ。外国人の居住についても4月の入管法施行以降、当初の見込み需要に届いていない向きもあるが、入居のあっせんで終わりではなく、〝生活者としての外国人〟という目線で生活全般の受け入れ理解を進めることで新たなビジネスチャンス獲得の機会となる。






















