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スタンダード会員限定開 講「不動産未来塾」牧野 知弘 塾長に聞く (下) 緻密なマーケティングを

住宅新報 2019年10月22日 号 3面

総合
牧野 知弘氏

牧野 知弘氏

 ――生活スタイルの多様化が進んでいます。

 一般的に「家は寝に帰る所」とも言われてきたが、働き方の自由度が広がり、家で過ごす時間が長くなるほど家はどうあるべきか、どうあってほしいかという欲求が高まってくる。その結果、消費者が住宅に求めてきた機能や効用が大きく変わり、自分の欲求を高度なレベルで満たしてくれる家が、理想の住まいになっていく。例えば住み心地であったり、生活にもっとカンファタブルなサービスが備えられていたり、在宅での仕事に適しているかなどだ。マンションも全戸同じようなプランである必要はなくなる。住む人たちそれぞれの趣味趣向に合わせてプランも多様になっていく。これまでのように「箱モノ」を造り、相場通りに販売できたとしても、目が肥えていく消費者には買ってもらえなくなる。そうした観点から見ると、今業界が提供している住宅が果たしてそうしたニーズに応えていけるのか心配だ。

 ――中古住宅流通活性化が期待されています。

 消費税増税前の駆け込み需要は起こらなかったが、一方で中古住宅流通がこの数カ月ものすごい勢いで伸びている。10%の消費税を負担してまで新築を買うよりも、消費税が課税されない個人間売買の中古住宅を選択したユーザー志向の表れと見ている。

 マンションディベロッパーには、これからは新築と中古の闘いの時代だと話している。東日本レインズの直近の中古住宅成約件数が急増しているのは、中古住宅流通に活路がある表れで、未来の市場を物語っている。新築はその良さをどう魅力付けしていくか真剣に考え直さなければならない。

 過去の成功の方程式はもはや通用しない。この先も消費者のニーズはますます発展、進化していくという目線で仕事に取り組まなければならない。心配なのは、今の不動産業界には不動産事業とソフトウェアやAIを組み立てられる人材が極めて限られていることだ。まさに風雲急を告げていると言わざるを得ない。

 ――最後に業界の課題は。

 街づくりや都市の再生では、まちに魅力を感じ、意図を持ったユーザーたちが集まってくれるような、人を呼び込める機能をどれだけ装備できるかがポイントだ。ターゲットとする人たちを引き込む、好きな人に好きになってもらうという当たり前の発想が、これまでの不動産業にはないに等しかった。

 製造業では既に消費者の趣味趣向を徹底的にマーケティングして、それに基づいた商品作りが当たり前のように行われている。これに対して不動産業にはまだマーケティングがしっかりと定着していない。商品をつくって並べれば、客が自然に集まってくるという発想だ。自分たちの不動産事業が誰をターゲットにして、どれだけの対価を払ってもらえるのか、その全体像を調べ尽くし、確信的に事業化することが求められている。そこにソフトウェアを組み入れることで、これまで以上に高い収益を上げる不動産事業になる可能性が高い。これからの時代、不動産業はより緻密なマーケティングを打ち立てて、事業化に臨まなければならないのは明らかだ。

   (聞き手・市川佳之)

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