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スタンダード会員限定〝信託〟活用広がる 事業承継にも有効

住宅新報 2019年8月6日 号 20面

総合

 認知症になった場合の財産凍結などの状況を回避する手段として、近年注目を集めている家族信託。認知症になって判断能力がなくなると、子供であっても自由に親の預貯金の引き出しや、所有している不動産の売却ができなくなる。そうなる前に、財産の処分や管理を信頼できる家族に託しておくものだ。不動産業界でもこの家族信託のコンサルティングで実績を重ねる企業が登場している。

 中古ワンルームの販売と管理を手掛ける日本財託(東京都新宿区)は、15年末から、家族信託を活用した相続対策の提案を始めた。信託の仕組みを紹介するセミナーとその後の個別相談を通して実施。このほど累計で家族信託契約サポート数が100件を超えた。しかも、最近は家族信託の知名度が上がったためか、更にハイペースになっているという。

 利用目的としては自宅の凍結防止が多い。例えば次のようなケースだ。

 最近、高齢の両親が相次いで介護施設に入所したAさん。一人っ子で両親の老後は自分の肩にかかっている。2人の介護費用をどうやって捻出するかが目下の悩みで、選択肢としては、両親が住んでいた自宅マンションを売却してその資金を充てること。ただ、そのマンションは2人の共有名義で、父母どちらかでも認知症で判断能力がなくなると売却できなくなる。父親に物忘れなど認知症の兆候が見え始めていたAさんは心配だった。そこで、Aさんが受託者となり、マンションの管理や運用を行えるように信託契約を締結。将来の介護費用を捻出する目途が立ち、安心したという。

 不動産は売りたいときに、すぐに買い手が見つかるとは限らない。事前対策は重要だ。

 不動産仲介の京成不動産(東京都葛飾区)も、2年前から家族信託のコンサルティングを開始。これまでのコンサルティング契約は約30件に上る。

 更に同社では、家族信託の組成ノウハウを生かし、事業承継信託コンサルティングも手掛けている。今、中小企業を中心に、次世代に会社をどう引き継いでいくかは大きな課題。会社の機能の多くを、創業社長が担っていることも多く、スムーズなバトンタッチが出来なければ大混乱をきたす可能性があるからだ。

経営と資産に分離

 事業承継方法にはM&Aや上場などもあり、この事業承継信託はその一つ。「名義」(受託者=信託財産を管理・運用・処分する権限を持つ人)と、「権利」(受益者=信託財産の活用から生じる利益を受ける権利を持つ人)に分離可能という信託の特徴を生かしたものだ。つまり、自社株を信託財産として、「経営(社長)」と、「資産(株式配当等を得る権利)」に分離することで、経営の承継と資産の承継を別々のタイミングで行うことができる。従来の事業承継では、その2つをセットで行うことが前提だったため、「後継者が育っていない」「後継者は育ったが、資産(自社株)の評価が高いまま後継者に株を移すと税負担が大きい」など、そのどちらかに課題があると事業承継を先送りせざるを得なかった。その点、信託スキームならば、経営と資産を、それぞれの最適なタイミングで承継を実行できる。

    ◇   ◇

 厚生労働省の推計では、団塊世代が全て後期高齢者となる25年には、認知症患者数が700万人を超える。これは高齢者の5人に1人が認知症患者という数字だ。不動産会社として、信託や後見制度に精通しているかどうかは、顧客の信頼を得て、ビジネスにつなげるための大きなカギになりそうだ。

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