特色ある産業を支援 未来をつくる 新たな役割「まち育て」
住宅新報 2019年8月6日 号 1面
温故知新のまちづくり
三井不動産は、日本橋ライフサイエンスビル(東京都中央区日本橋本町2丁目)に、日本初のシェア型ウェットラボ(研究施設)「Beyond Bio Lab TOKYO(ビヨンド・バイオ・ラボ東京)」を19年2月にオープンした。創薬など「ライフサイエンス」分野を支援する施設で、運営は技術系ベンチャーの事業化支援を行うBeyondNextVentures(株)が担当する。
ビヨンド・バイオ・ラボ東京は、オフィスの隣にラボがあり、共同利用できる実験設備や機材があらかじめ設置されている。三井不動産は、施設開設直前の会見で「日本橋本町は元々、薬種問屋のまちで、日本橋にライフサイエンス領域で新産業創造のエコシステムを構築する」と説明。歴史的な背景がある産業の新分野で、新たなヒトや企業を呼び込む、温故知新のまちづくりといえる。
オープン後、約7割の入居者が決定し、入居者と運営会社メンバーとの交流会に加え、月5、6回程度イベントが開催されている。
ビヨンド・バイオ・ラボ東京はスタートアップを支援する施設だが、運営会社によれば大企業の新規事業において大きな設備投資をせずに初期データの検証を行うという、当初想定していなかったニーズがあった。これを機に、スタートアップと大企業との交流も生まれている。
国内外に認知広がる
三菱地所が手掛ける「FINOLABO(フィノラボ)」(東京都千代田区大手町1丁目)は、金融とテクノロジーを融合させる「フィンテック」分野のスタートアップを支援する施設で、16年2月から本格スタートした。「メンバーシップ制の組織にオフィスが付属するイメージ」(堺美夫xTECH営業部兼ビル営業部統括)で、分野に特化した施設としては先駆け的な存在となる。現在、会員は大手企業やスタートアップなど約50社・500人にのぼる。
運営開始から3年余りが経過したフィノラボについて、三菱地所は大手金融とスタートアップが物理的に近い距離にあることで、双方のビジネスがスピードアップする環境が整いつつあると評価する。既に上場を果たした企業やフィンテックに詳しい弁護士などにより、フィノラボに入居するスタートアップを支援する一般社団法人も立ち上がった。また、フィノラボの存在は国内外の公的機関に認知されつつある。日銀や金融庁のほか、香港やシンガポールの金融当局がフィノラボへの視察やイベント開催などを継続的に行っている。
新たな動きとしては、7月に運営組織を株式会社化。同時に、リアル(施設)とオンラインを融合し、新規事業創出を加速する。来年には「サンドボックス」と呼ばれるネット上で社会実験ができる環境を整え、新たな金融サービスの社会実装を後押しする。
「持続可能性」を事業へ
日本企業でもSDGs(持続可能な開発目標)が意識されるようになる中でも、ビジネスにはなりにくいとされた「サステイナブル」分野。東京建物は、同社が18年12月に開設した施設「City Lab TOKYO(シティラボ東京)」(東京都中央区京橋3丁目)を拠点に活動する、サステイナビリティ(持続可能性)特化型ベンチャーコミュニティ「City Lab Ventures(シティラボベンチャーズ)」が19年4月19日から活動を開始した。
シティラボベンチャーズは、TBM、ユーグレナなどベンチャー企業6社が発起人。まずは、ベンチャーと地方自治体が連携した取り組みについてのオープンイベントから着手した。第1回目のイベントは7月24日に行われ、大企業や自治体、ベンチャー企業など100人以上が申し込み、約90人が会場に詰めかけた。登壇者は発起人3社が自治体関係者と共に登壇し、それぞれが自治体と共同して行っている事例を紹介。ベンチャーと地域、課題などについて議論した。
シティラボ東京は、コワーキングスペースとしても利用可能だが、「サステイナブル」に関するイベントなど様々な情報交換の場として機能している。今後は、ベンチャー共通の課題である資金調達や人材、広報戦略に関する情報交換を行っていく予定だ。
不動産業が今求められているものは、新たな成長戦略だ。分野特化型のスタートアップ支援施設は、新たな成長戦略としての事業機会の獲得に加え、まちの魅力を向上させ、「新たなヒト、産業を呼び込む」(東京建物)ことが目的の一つとしてある。価値を生み出す機能を建物に付けて、価値あるまちに成長させていくことが求められる。「まちを育てる」ことが、これからの不動産業が果たす新たな役割になる。



























