幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 55/100 住まいが変わればーー 社会を変えることができる
住宅新報 2019年8月6日 号 15面
連載: 幸福論的「住宅論」

家という従来の固定概念を取っ払った新たな住まい方が出現(写真提供=アールシーコア)
住宅のあり方を変えれば社会を変えることができる。そうした前提に立って、これからの議論を進めたい。なにしろ、住宅は国民生活の基盤なのだから……。
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まず、住宅業界はこれまでハードの議論しかしてこなかったような気がしてならない。耐震性、耐久性、断熱性、省エネ性などの追求である。そうしたハード中心の思考が流通市場の改革にあっては、瑕疵保険制度、「安心R住宅」、インスペクションなどの法制度化に向かわせた。
もちろん、設備を含め住宅の基本性能を向上させる努力は今後も継続していかなければならない。省エネ性能についても、単なる省力化だけでなく〝創エネ〟を組み合わせたZEH(ゼロエネルギーハウス)の普及は国家的プロジェクトとして進めるべきだろう。
しかし、住宅が備えるべきものはそうしたハード面の性能や機能だけだろうか。実はその先にあるソフト、暮らしのあり方にこそ、これからはもっと気を向ける必要があるのではないだろうか。もっとも暮らしのあり方に気を向けるといっても、ハード面と違い、正しい暮らしのあり方などという基準は存在しない。とはいえ、万人が望む暮らし方がないかといえば、そうでもない。紀元前、中国・春秋時代末期の思想家、孔子はこう言った。
「之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」
精神科医で随筆家でもあった斎藤茂太氏は「〝できること〟より、〝楽しめること〟が増えるのがいい人生だ」という名言を残している。住宅は生活の基盤なのだから当然、家は暮らしを楽しむ場でなければならない。
楽しむ道具
〝「住む」より「楽しむ」〟をブランド・スローガンとしているアールシーコア(二木浩三社長)は、まさに「家は暮らしを楽しむ道具」と割り切るユニークな住宅会社である。〝BESS〟ブランドのもと、様々な自然派個性住宅を生み出している。
このほど発表された最新モデルがその名も「ワンダーデバイスギャング」(写真参照)。必要最小限の母屋と、〝離れ〟(ログ小屋)を広めのデッキでつないだ商品で、主役は〝遊び〟である。家は、仲間と共にデッキに集い、暮らしを楽しむための基地という考え方である。
まさに頭の中から家という従来の固定概念を取っ払い、何がしたいのかというところから発想してみる。家づくりの〝離れわざ〟である。だから、家には玄関がなければならないという常識もくつがえした。遊びに来た仲間たちを出迎えるデッキが玄関のようなものである。
しかし、この〝離れわざ〟はかなりの冒険である。本当に商品として成功するのかどうかも未知数だ。ただ、戦後供給されてきたこれまでの日本の家が所有とか資産価値を意識しすぎて、あまりに、〝閉じられた〟思想をもつ単体になってしまったことは否めない。それが地域の活力を奪い、人間関係(コミュニティ)を希薄化してきたと言えないだろうか。「ギャング」がそうした閉塞感に一石を投じる商品となることは間違いない。
閉塞感を打破
住まいのあり方を変えれば社会を変えることができると思うのは、社会は人々の意識でできているからである。その意識の中には、潜在意識も少なからず含まれている。そして、その潜在意識に気付かせてくれるのが、ほかならぬ住まいである。住まいが変われば日本人の意識が変わり、感性が研ぎ澄まされ、社会の閉塞感に気付くはずである。
日本社会は今のままだと、高齢化率は40年には36%に達し、50年には約4割となってほぼピークに達する。しかし、人口減少が止まらなければその後も4割水準が半永久的に続く。単身世帯の比率は高齢化率よりも早く上昇し、40年には4割に達し、その後はほほ横ばいで推移する。
つまり、日本社会は出生率が上昇しなければ未来永劫、2.5人に1人が65歳以上で、「向こう3軒両隣」のうち2軒が一人世帯となる。これは日本全体が〝限界集落化〟していくことを意味している。 (住宅新報顧問)






















