幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇49 生きがいとは 役割をもち、日々を楽しむ
住宅新報 2019年6月25日 号 23面
連載: 幸福論的「住宅論」

「おやさいコミュニティハウス」は首都圏近郊に〝お試し移住〟をするきっかけになる可能生を秘めている
老後にあり
アクティブシニアがリタイア後の人生を楽しむための〝住まい〟とはどんなものだろうか。資金に余裕がある富裕層ならばいかようにもプランを立てることができるから議論する意味はあまりない。ここではごく一般的な所得階層を想定し、いわゆる老後の生活を楽しむための方法を議論したい。
定年で仕事がなくなると、「生きがいを失う」とよく言われるが、では生きがいとはなんだろうか。人生における生きがいとは「自分の役割」をもつことであり、日々の生活を楽しむことである。
生きがいをこのように定義すると、もしかしたら本当の生きがいは現役時代ではなく、老後にこそあるのではないかという気がしないでもない。
自分の役割をもつためには、ある目的をもった集団に属する必要があるだろう。それを仮に〝コミュニティハウス〟と名付けることにしよう。同時にその集団の目的を明確にする必要がある。企業でいえば経営理念のようなものだ。
6月6日、神奈川県藤沢市の藤沢商工会館で、「おやさいコミュニティ株式会社」の設立総会が開かれた。新鮮で健康的な野菜づくりを主な目的に元気なシニアが集う「おやさいコミュニティハウス」をプロデユースする会社だ。まだ実現はしていないが、首都圏近郊でいくつかの案件が動き出している。
副収入を得て
システムとしては以下の通り。土地所有者に建物(ハウス)を建設してもらい、それを新会社が賃借しハウスを運営する。庭先の畑でプロの指導を仰ぎながら野菜をつくる。農薬をあまり使わないようにし、つくった野菜は近隣のレストランや料亭などに販売する。それによって得た利益を共同作業をしたみんなで分配し副収入とする。一般的所得階層の高齢者の多くが「年金のほかに年間40万~50万円あれば豊かな老後を楽しむことができる」と回答している。そこで、「ハウス」では、一人当たり月に3万~5万円ほどの副収入が得られるようになることを目指している。
実は設立された新会社の役員(11名)の平均年齢はちょうど70歳。つまり、高齢者陣自らこれからの長寿社会に求められる、新たな住まい、やりがいを感じながら楽しく暮らせる居場所づくりに挑戦する。70歳といえば団塊世代の最終年代(1949年生まれ)に当たる。戦後、数々の社会現象を巻き起こしてきた世代が、超高齢社会の新たな住文化を創ろうとしているのだと思う。
目標と目的
それは決して〝終の棲家〟ではない。あくまでも、現役を退いたあとの人生を積極果敢に楽しむための一つの選択肢である。「おやさいコミュニティハウス」には賃貸借契約で入居する。だから、もし期待と異なればいつでも退去できる。退去して自宅に戻る人もいるだろうし、将来は野菜づくりだけではない様々なコンセプトをもったコミュニティハウスが全国各地に生まれていれば、各地のハウスに〝お試し移住〟する人もいるだろう。例えば、葡萄づくりに挑戦するハウス、花の栽培をするハウス等々。ポイントは入居者が就労することでやりがい、生きがいを感じながら副収入を得ることだ。
大都市圏近郊にこうしたコミュニティハウスが誕生していけば、一人暮らしになってしまった高齢者が自宅からさほど遠くない地域に早めに気軽に移り住み、楽しく暮らすことで病気を予防し、最期まで社会への参加意識をもって人生をまっとうすることができるのではないか。
〝夢物語〟に聞こえるかもしれない。しかし、人生はいくつになっても夢を抱いて生きるべきものである。たとえ明日死ぬことが分かっていたとしても、今日一日を自分らしく生きることが夢であり、目標でもある。
なぜなら、人はどんな境遇にあっても、自分らしくあればそれだけで幸福でいられるからである。つまり、人間にとって自分らしく生きることは常に人生の目標であり、自分らしくこの世を去ることが人生の目的となる。
(住宅新報顧問)






















