幸福論的 『住宅論』 住宅評論家 本多 信博 ◇44 なぜ「幸福論」か 日本を元気にするサプリ
住宅新報 2019年5月21日 号 13面
連載: 幸福論的「住宅論」

なんのために人は夜遅くまで働くのだろうか。それは「幸福とは何か」を考えることでもある。幸福とは何かが分かれば働く意欲がわいてくる
マスコミがよく使う「今は百年に一度の変革期」などという言葉がもはや死語になりつつある。というのも、これからは〝今〟に限らず、常に百年に一度の変革期が続いていくような気がするからだ。人間がコンピュータや機械の発達に追いまくられる時代が今後永遠に続くのだと思うと憂鬱になる。
指紋認証や顔認証技術などの発達で財布や家の鍵はもちろん、VR(仮想現実)技術が進化し、スマホさえ持たずに外出できる社会がやってくるという。しかし、そのように便利さばかりを追求した社会が本当に人間に幸福をもたらしてくれるのだろうか。人間のあらゆる行為がすべて機械によってサポートされ効率化されていくことで、人間本来の能力が失われていくということはないのだろうか。
豊かな人間社会実現を目指す「働き方改革」の目標も、結局は日本の経済成長促進にあるように思える。経済成長が必ずしも人間社会の豊かさや人々の幸福な生活に結びつくわけではない。それは日本が成し遂げた高度経済成長の結果を見ても明らかである。 物質的豊かさから精神的豊かさへという価値観の転換がうまく進まない原因はどこにあるのだろうか。戦争に負けたことで、日本人はそれまで誇りとしてきた豊かな精神性に自信を失ったのだろうか。今こそ働き方改革の論議に「なんのために働くのか」という問い掛けを加える必要があるのではないか。そこに一番気付いてほしい産業こそ、住宅・不動産業である。






















