住民主体の空き家対策 元気なうちに家の決着を 自治体とNPOを中心に
住宅新報 2019年5月7日 号 3面
同事業は、東京都八王子市の北野台団地の北野台自治会(4875人、1902世帯)や八王子などと連携し、郊外戸建住宅地を対象とした各種アンケート・ヒヤリング調査等を実施し、自治会とNPO等による空き家の発生予防、適正管理、利活用の事業モデル案の作成を行った。
まちづくりと一体で空き家対策
空き家問題は所有者と不動産流通だけで解決する問題ではない。個々の空き家対策と、住宅地全体の魅力や価値の維持向上のためのまちづくりと一体での対策が重要だ。
空き家対策は、「発生予防」「適正管理」「除却更新又は利活用」に大別される。良好な住環境が維持される一方、急速な高齢化と住宅の高経年化が進む郊外戸建て住宅地では、空き家の発生予防に重点を置き、空き家状態を経ないで円滑に継承や更新が行われる取り組みが求められる。
また、家は死後に配偶者や子供等の相続人に委ねるとの意識を改めていかなければならない。元気なうちに、家の行く末を自ら決めておくとの意識を社会的に啓発・共有化することが重要だ。
個々の空き家の責任は所有者にあるが、自分たちの地域を自分たちで経営していくよう、地域住民で空き家対策に取り組んでいく。その担い手は、地域に根差した自治会とNPO等だと思う。
空き家管理を警備会社などに委託すると費用は高額になるが、地域住民主体のNPOで行うなら安く任せることもできる。自治会だけでは役員の交代や高齢化問題もあり、継続活動し難い。
NPOの管理サービス
空き家の「適正管理」や「見守り」を含めた多様な生活支援サービス(有償)を、住民参加型のNPOで実施する。住民が空き時間で活動すれば、緩やかで無理をしない形で持続しやすい。住民同士もNPO活動を通じて顔見知りになるし、お小遣い稼ぎになれば参加したいと考える人も当然いる。
アンケート結果(回答数743)でも、地域のNPO活動に「参加したいと思う」が81人(10.9%)、「家族が参加できると思う」が15人(2%)、「今は仕事を持っているので難しいが、将来は可能な範囲で参加したい」が79人(10.6%)だった。
そのうち、NPO活動への参加頻度については、「無理のない負担感のない範囲で楽しく参加したい」が69人(75%)だった。責任者はなりたくないが、気軽にできる範囲でなら参加したい人が多い。
利用希望の多い空き家管理サービス(回答数561)は、「敷地内の草取り、樹木の選定や清掃」が49%、「郵便物やチラシなどの整理処分」が42%、「道路からの目視による不良確認と写真報告」が35%など多様なニーズがある。
自治会が自治会費の一部を空き家対策に使うことについても、賛成と反対の両方の意見が出たが、住宅地全体の利益になり、節度を持って行うなら理解が得られると思う。
自治会とNPOによるまちづくりや空き家対策の先進事例には、神奈川県鎌倉市の鎌倉今泉台や八王子市のNPOめじろむつみクラブがある。
また、空き家の連絡先がわかっているのは約1割で、台風などで被害があってもどこにも連絡できないことが多い。「空き家情報登録制度」を設け、見守りと緊急時連絡体制を構築していくことも必要だ。個人情報の問題もあるので、行政との連携も必要だ。
家族信託も有効
将来の相続に向けて空き家対策の有無(回答数561)は、「相続人の子供たちに任せている」が34.8%、「将来空き家になる可能性があり、問題意識はあるが、具体的な検討は行っていない」が32.6%と、約3分の2の人が対策を行っていない。
自治会で「空き家になるとこんなに大変なんだ」ということを周知し、元気なうちに空き家の発生予防するよう啓発していかないと、今後は団塊の世代で相続が発生し始めるので、問題は大きくなる。
終活とセットで、家を次の人にバトンタッチして、空き家にならないように予防する。子供に任せるだけではなく、自分が生きているうちに家の決着をつけること。そのために、家族信託や遺言・寄贈、後見人制度等を啓発していく。空き家が増えて、地域の防犯などの問題発生を考えれば、自治会が地域住民に啓発し、行政にも専門家相談でサポートを求めていく。
そのために家族信託(民事信託)などの制度を活用すべきだ。遺言は死亡後から効力が発生するが、家族信託は生きているうちから効力が発生し、遺言以上に自由度が高い相続が可能だ。例えば、自分の死後10年間は地域のコミュニティサロンに活用してほしいや、子供が亡くなった場合誰に相続させるかを2次信託、3次信託までできる。空き家問題に万能薬はない。いろいろな解決方法を組み合わせて対応していくしかない。


























