居酒屋の詩 (45) 曇りなき心の月を先立てて 浮き世の闇を照らしてぞ行く
住宅新報 2019年4月9日 号 11面
連載: 居酒屋の詩
赤々と新橋の夜の闇を照らし出す「ゆうき家・日比谷口店」の看板が妙に艶めかしい。ここは、以前八丁堀の店で懇意にしていた板前のKさんが先頃転職した先の居酒屋である。
いかにもサラリーマンの街といった風情が漂う店ではあるが、大衆居酒屋にありがちな乱雑で騒然とした感じはない。むしろ、サラリーマンがしばしの憩いを求めてやってくるオアシスのような落ち着きも感じさせる。ただ、板前さんとの話がしやすいカウンター席は短い。初めて訪れた日、カウンターで飲み始めるとKさんが顔を出し、短いあいさつは交わしたが八丁堀時代のようなバカ話はできなかった。まだ移ったばかりだし、先輩の板前さんもいたから当然のことである。
上掲は仙台藩主伊達正宗の歌。たとえ世の中が暗い闇に閉ざされていても、己の心の中に浮世の闇を照らし出す月の光を抱いて生きていくという決意が詠まれている。新しい職場に移ったKさんに贈りたい。そういえば、正宗の兜は闇のような黒塗りで、そこに金色の三日月が怪しく輝いている。






















