賃貸初期費用を徹底抑制 鍵は地元業者との連携 ビレッジハウス・マネジメント(東京都港区) 地域ニーズ掴み、外国人にも積極対応 安価で住みよい新感覚団地
住宅新報 2019年3月19日 号 17面
ビレッジハウス・マネジメント(以下、ビレッジハウス社)は、フォートレス・インベストメント・グループ・ジャパンの子会社で、ソフトバンクグループ傘下の一員に当たる。大きな資本が背景にあるのは確かだが、その不動産事業へのアプローチは、一般的な「大企業の不動産部門」とは一線を画す。
住宅SN制度の先頭に
ビレッジハウス社は、「良質な賃貸住宅を、簡単な手続きとおトクな価格で」というコンセプトで不動産賃貸事業を展開。家賃は希望するグレードやオプションなどによって変わるものの、2万~6万円台と全体的に安価だ。
最も大きな特徴は冒頭に挙げた通り、一般的な賃貸物件入居に必要な初期費用のほとんどを排除した独自のシステムだろう。引っ越し費用補助やフリーレントなどのサービスも用意しており、初期費用項目の多い業者と比べ、最大93%カット(同社シミュレーション)としている。
こうした入居システムについて、岩元龍彦共同代表(西日本統括)は「低賃料の住まいを求める人は、基本的に貯蓄も難しい人が多いのだと思う。そうした人にとって大きなハードルとなっている、『多額の初期費用』を払しょくする商品設計にした」と語る。
低所得者や高齢者といった 住宅確保要配慮者にも対応するコンセプトは、国の進める住宅セーフティネット制度とも通じる。実際に、住宅セーフティネット制度に基づく登録物件が7590件(2月末現在、同社調べ)のところ、過半数以に当たる4256件(同)が同社の保有物件。「我々は同制度の成功に向けたフロントランナー」と岩元共同代表は胸を張る。
「雇用促進住宅」を刷新
ビレッジハウス社の供給する住宅のほとんどは、もともと高齢・障害・求職者雇用支援機構が保有していた「雇用促進住宅」の建物。かつて国の雇用保険事業の一環として整備されたものだ。
そして国の方針に伴って売却されることとなった雇用促進住宅を、フォートレス社が16~17年にかけて、約609億円を投じ一般競争入札で取得。その数は全国で1149物件、10万6318戸にも上る。同時期に運営会社を設立。その後取得物件をリノベーションして「ビレッジハウス」とリブランディングし、併せてビレッジハウス社へと社名を改めた。
この経緯を見て分かるように、ビレッジハウス社の低廉な賃料や徹底した初期費用の抑制は、まず通常の物件と比べ取得費用を割安に抑えている点がある。しかしながら、「安かろう悪かろう」で妥協しないことも同社の特徴だ。
現在保有している物件数は9万9850戸(2月22日現在)で、ほとんどは平均築年数40年以上のいわゆる集合住宅団地。それを棟単位でリノベし、時には大胆に間取りを変更するなどして、現代的で住みやすい居住空間を心掛けた。エレベーターはほぼ設置されていないものの、高層階ほど安くするという賃料設計でニーズを分散するなどの工夫も凝らしている。
発信力が課題
「ビレッジハウス」は一定の層からの住宅ニーズを的確に捉え、当初約34%だった入居率を約53%ほど(同)へと着実に伸ばしてきた。しかし、徹底して入居者負担を抑えた事業展開であり、スケールメリットによる収益確保のためにも更なる入居率の向上は欠かせない。
岩元共同代表は「まず情報をしっかりと届けていかなければ。我々はまだ、その発信力を十分備えていない」と率直に話す。もう一人の共同代表、工藤健亮氏(東日本統括)も「今は戸数の拡大等よりも、リーシングに注力している。大切にしているのは各地域の地元仲介業者で、そのつながりによる物件仲介は圧倒的に多い」と語る。
そのため、設立からまだ3年目ながら、既に全国1万社を超える業者を営業担当が訪問し、関係を構築しているという。また原状回復などに伴う内装工事も、地元業者と協力して行っている。
地域知る業者の助力
地元業者との関係づくりは発信力強化だけでなく、普及のためのもう一つの重要な鍵となる、地域の事情や特性への対応にもつながる。
ビレッジハウス社によると、廉価な賃貸物件の入居者層には地域差が大きい。「ビレッジハウス」の場合、例えば愛知県では飛び抜けて外国人入居者が多く、全国平均では約20%のところ50%以上が外国人で、主にメーカー工場などの労働者が入居。静岡や滋賀などでも同様の傾向が見られるという。もちろんこうしたニーズへの対応にも力を入れており、ホームページの多言語化のほか、契約書も一部外国語対応を図っている。
更にピンポイントな事例では、山口県の賃貸物件に乏しいエリアで大学が学部を新設した際、学生向け物件不足の情報を地元業者からいち早くキャッチ。一旦間取りを広く改修した棟を再度単身者向けに改修し直し、まとまった数の物件を供給したケースもある。ここでも事業を後押ししたのは、地元業者の協力だ。
住みやすく温かい団地へ
今後の事業方針として同社が計画するのは、まず外構や共用部などの環境整備。そして本当に地域から必要とされる事業のあり方をつかむため、エンドユーザー向けと併せて、各地でBtoBの広報を積極的に展開中だ。
加えて、将来的には花見などのイベント実施も計画し、団地コミュニティの形成などに関与することで、物件の付加価値の向上も図っていく。
岩元共同代表は「今後も住みやすく温かい団地づくりを心掛け、安定稼働を目指す」と方針を述べ、工藤共同代表は「そこにニーズがあるならば応えていく。それが我々の使命と考えている」と言葉に力を込めた。(佐藤順真)



























