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スタンダード会員限定モクチン企画 (東京都大田区) 木造家屋の再生にノウハウとアイデアを提供 新しさにはない価値を生かしていく

住宅新報 2019年3月12日 号 19面

総合
  • モクチン企画 (東京都大田区) 木造家屋の再生にノウハウとアイデアを提供 新しさにはない価値を生かしていく

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 合言葉は「最小限の手数で、最大限の魅力を」――。 これは、部屋の魅力をアップして空室を解消したいオーナーや不動産管理会社に共通の願いだろう。木造家屋の改修に特化するモクチン企画の狙いは、「きちんと社会資源として扱う。個々の物件から発展させ、まち全体の魅力も高める」(モクチン企画代表理事の連勇太朗氏)こと。

 オーナーの多くは個人のため、最適な〝伴走者〟が必要になる。そのためモクチン企画は、組織形態を株式会社ではなく、「NPO法人」とした。利益優先のビジネス重視ならば、採算が合わないと撤退してしまう。そこに取り残されるのは、その物件、その地域となる。NPO法人であれば、社会的な使命感を持ち、共感が得られやすく、協働もしやすい側面がある。

まちに賑わいを

 社会的使命とは、負債にとられがちな木賃などの木造家屋に萌芽をつくることだ。華を咲かすのはオーナー、入居者、地域となる。

 物件の改修は、短期的には空室率が下がる。しかし、まちや社会の根本的な問題の解決には、「中長期的な視点を持ち、まちに賑わいをつくり、魅力を高めることが重要」(連代表理事)で、糸口は不動産にあり、生かすことで、まちの未来の視界が広がる。

 魅力ある物件が集まれば、まち全体のブランディングに発展する。その端緒にはまず、個別物件の改修で価値を生み出す必要がある。では、どのように価値を生み、生み続けられるようになるのか。

レシピの提供で

 そこでモクチン企画は『モクチンレシピ』と呼ぶ〝改修のアイデア〟を提供する。事例写真や文章で構成し、より細かく知りたければ、メンバーズ会員になれば図面や仕様書をダウンロードできる。電球1つを取り替える、または、間取りや外構まで変える大規模なものまで、あふれるアイデアをウェブサイトで公開している。部分的な改修方法をそろえており、どれもがデザイン性が高く、自由に組み合わせて可能性が広がる。

 例えば、「カーテンシェルフ」は、味気ない窓に彩りを加える。窓際上部に棚を設けることで、カーテンレールの役割も果たす。レールに洗濯物を干すと、ゆがんだり、窓枠の下地まで傷めてしまうといった相談の声を聞き、その心配を解消する方法だ。

 『モクチンレシピ』は、料理のレシピと同様につくり方が分かるだけ、ではない。なぜその工夫や施しをするのか、意味や考え方までを解説するのが特長だ。カーテンシェルフでは、「窓際に棚があれば部屋のアクセントになり、室内の雰囲気を変えることができる」と解説している。

 母親が子供に食事をつくる際と同じだ。健康のため、勉強に集中できるようにと、願いを込める。『モクチンレシピ』にも、そうした思いや考え方の解説文を併記する。いくつかのレシピを習得すれば、魅力を高めるための改修方法の考え方が自然と身に付く工夫だ。基本手法から刺激を受けて応用すれば、様々な場面に適用できそうだ。建材やリノベーション製品などを販売するのではなく〝考え方〟を提供することが、モクチン企画を貫く軸にある。

スクールで伝える

 実践方法についても、『モクチンスクール』を開講し、隔週全5回の日程でノウハウを伝えている。直近では、5月末に開講分の受講希望者を近く募集する。メールマガジンなどで告知する。

 カリキュラムでは、座学やワークショップを通じ、デザインの基礎知識から物件に対する分析力、アイデアの企画力やオーナーへの提案力、物件のプロモーション方法までが習得できるようになる。

 更に詳しく学びたい場合には、『モクチンパートナーズ』の制度がある。協働する仕組みで、改修ノウハウを共有する学びの場として、コンサルティングサービスを提供する。前述のトーコーキッチンをオープンした東郊住宅社(相模原市)は、その最古参パートナーの1社となる。

ブランディング

 ここでは、『モクチンレシピ』を効果的に使う改修ノウハウを学びながら、各社独自の価値を構築する体制をつくり、業界のトップランナーを目指す段階まで、モクチン企画が伴走する。特にこのプログラムでは、地域に根差す不動産管理会社だからこそできる、自分のまちのブランディングも手掛けられるようになる。それはどういうことか。

 オーナーや地元不動産管理会社、工務店は、それぞれに課題や危機感を持っている。魅力的な部屋を手掛けたい、面白い人たちに入居してほしいと思っている。既にパートナーとなった各社では、トーコーキッチンのように、まちの顔や入居者たちの要となるような交流拠点などを設け、イベントを開催し、コミュニティづくりを始めている。管理業務のノウハウを生かし、まちづくりという醍醐味のある仕事は、きっと楽しく、スタッフの高いモチベーションにもなるだろう。

 誰に住んでもらうのかも、まちの大切な要素になる。まちの顔や表情、イメージが変わっていくからだ。現在、地域で衰退の影を落としているのであれば、その状況を変えることができる。

「既存」のもつ価値

 モクチン企画の活動の基盤は、前述からの『モクチンレシピ』にある。木造物件を魅力的にするアイデアの数々が詰まっている。部分的なアイデアだからこそ、柔軟に使えて、取り入れやすい。そのアイデアの真髄には〝既存を生かす〟との発想がある。既存には決して新しいものにはない価値がある。新築をまねて改修するのではない。その発想がモクチン企画の源にあり、貴重なその既存の価値を生かす方法を追求している。

 経済的な合理性ではなく、空間的優位性を重視しており、「そこにあった時間の蓄積は、価値に転換できる。逆に、その潜在価値をきちんとしないと、既存ストックが増える中、不動産の未来は厳しいと思う」(連代表理事)。

 まちの〝編集力〟

 ストックビジネスの現状は、物件の経年により、価値を落としがちだ。熟成するほど、価値が上がるモデルをつくる。安いコストと少しの手間で、物件の魅力を最大限に引き出す。物件と人をつなぐ、まちとつなぐといった〝まちの編集力〟がまちづくりの担い手には必要となる。

 かつての地域の不動産会社は、その役割を果たしていたのではないか。「現場の創意工夫が一番大事。そこでの学びから、アイデアは生まれてくる。だからこそ、より多くの仲間を広げて想いを共有したい」と、モクチン企画は今後を描いている。(坂元浩二)

 老朽化や収益性の低下、設備機能の陳腐化などによって、役目を果たしたかのようにとられがちな木造賃貸アパート(木賃)の存在が危ぶまれている。食傷気味のこの言葉だが「空き家問題」が浮かび上がる。そこで、木賃に光を当て、社会資源として再生するモクチン企画は、改修を行うためのデザイン方法を誰でも利用できるように惜しみなく、ウェブサイト上で公開している。オーナーや地域の不動産管理会社、工務店などの〝伴走者〟としての取り組みは、不動産業界の内外で注目された入居者向け食堂『トーコーキッチン』のデザインを手掛けるなど、ユニークなアイデアにあふれている。

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