一般財団法人日本不動産研究所(40) 地域資源を生かす ~まちづくりからインバウンドまで 鳥栖 鉄道の一大拠点 九州最古の現役駅舎 故郷を代表する風景が存続
住宅新報 2019年2月19日 号 12面
15(平成27)年に日本の近代化を担ってきた「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録された。その遺産の多くは九州に所在するが鉄道駅は1つも特定されていない。
石炭運搬を担った鉄道や駅も重要な産業遺産と考えられるが、明治期の駅舎は建て替えが進み、現存するものはごくわずかだ。
その中で、鳥栖市京町に所在するJR「鳥栖」駅は、明治期の九州鉄道開通時より現存する九州最古の駅舎で、現在も1日平均乗降客数が約1.4万人の現役の駅として稼働している。
明治36年の建築 JR鹿児島本線と長崎本線が分岐する重要な駅である鳥栖駅は、かつて操車場、機関庫、転車台、自動給炭機などの施設や運輸事務所、保線事務所などの機関が所在し九州の鉄道施設の一大拠点だったが、現在は駅舎とそれに付随するプラットホームの上屋のみが残っている。
諸説あるが現存する資料から、駅舎は明治36年に建築、明治44年の増改築を経て現在の駅の骨格を作っていると考えられており、駅正面は竣工当時のままで、ホームの屋根を支える鉄柱には明治時代に製造されたレールが利用されているなど、当時の面影を各所に垣間見ることができる。
唯一人口増の町 鳥栖市は佐賀県の東部・九州の心臓部に位置し、周辺を福岡県に囲まれた、人口約7.3万人、面積約71.7平方キロの市だ。54(昭和29)年の市制施行時(約4万人)以来六十数年を経過した今でも一貫して人口が増加しており、佐賀県で唯一人口が増え続けると見込まれる極めてまれな地域である。
こうした人口の伸びは、鉄道、国道、高速自動車道の分岐点であり、建設当時「東洋一」ともうたわれたクローバー型で交差する「鳥栖ジャンクション」を擁する「交通の要衝」としての優れた地理的利点を生かし、物流・製造分野を中心とする企業誘致による雇用創出と、住宅環境整備による転入者の受け入れを積極的に行ってきたことによるところが大きい。
しかし、時代の趨勢により、84(昭和59)年に鳥栖操車場は廃止、鳥栖操車場跡ではこれまで、鳥栖駅東土地区画整理事業、「サンメッセ鳥栖」や「鳥栖スタジアム(サガン鳥栖のホームスタジアム)」の整備など、様々な事業が進められてその一方で、鉄道で分断された東西市街地の連携については、依然、課題として残されたままである。
存続の可能性 鳥栖市は橋上駅と自由通路を柱とした鳥栖駅周辺整備事業を進めていたが、18(平成30)年12月に財政面の厳しさから突如白紙撤回を表明した。計画では駅前広場のスペースを確保する必要性から「現駅舎を現地に残すことは困難」としていたため駅舎の存続が危ぶまれていたが、白紙撤回により駅舎存続に希望の光が差した。
鳥栖駅舎は九州における輸送機関の象徴であり、鳥栖市の発展の象徴でもある。鳥栖市民にとっては故郷を代表する風景でもある。これを機に貴重な歴史的遺産である現駅舎の保存、観光資源としての利活用について再考が行われることを期待したい。(佐賀支所、不動産鑑定士・梅本龍)


























