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スタンダード会員限定杭を残さず (上) 地中に埋まる社会問題 基礎杭の残置と埋め戻し問題

住宅新報 2019年2月12日 号 1面

総合
杭を引き抜いた後の不完全な埋め戻し状況

杭を引き抜いた後の不完全な埋め戻し状況

 土地売買に絡む裁判例がある。完全に引き抜かずに残置させた基礎杭と、抜いた孔の埋め戻し部分の地盤支持力の瑕疵について、売主の瑕疵担保責任と媒介した宅建業者の説明義務違反が追及された。

 判決で責任は否定されたが、地中に基礎杭が残っていれば、土地媒介の際に重要事項で説明しないと、責任を問われかねない。隠れた瑕疵として責任があれば、撤去費用や、買主の建築工事の進ちょくに影響を与えたとして、損害賠償を負う可能性がある。

再開発を断念へ

 事業を断念した案件もある。兵庫県のJR姫路駅南側の市有地では、賃貸住宅とモノレール駅舎の複合建物を解体した跡地で見つかった基礎杭200本が抜けず、再開発を断念して、駐車場などに利用されている。引き抜き工事の機械が破損し、振動工法は周辺家屋に影響があるための判断だ。そもそもの従前の基礎杭が曲がっていたり、斜めに打ち込まれていた事実も発覚し、当時の杭施工の内容に問題があった可能性がある。

再利用の選択肢

 基礎杭について、「打つ」ことの研究や議論は数多いが、実は、「抜く」ことに関心を持たない風潮がある。ただし「再利用」は、近年議論が進み、03年に旧建築業協会が、18年に同協会を合併した日本建設業連合会が『既存杭利用の手引き』を発刊している。

 その手引き書によると再利用で、新しい建物の施工コストや工期短縮のほか、既存杭の撤去や埋め戻しと新設杭の施工に伴う建設汚泥などの廃棄物を縮減できるメリットを示す。ただ、95年から20年間の論文報告ベースだが実例は215件と少ないようだ。

 再利用では、既存杭の耐久性や健全性、支持力を精査する。既存杭の隙間に追加の新設杭を打つと当面はよくても、数十年の長期スパンで見れば、いずれ打つ場所はなくなる。ゆくゆくの撤去は避けられず、後世に負担を残す。

 そもそも建物解体後の既存杭は、産業廃棄物扱いとなる。残置すれば、土壌を汚染する廃棄物処理法違反(不法投棄)を問われる。仮に抜くと周辺地盤への影響や隣接する建物の傾斜の恐れなど〝抜かない〟正当化事由がある例外的なケースに限られ、基本は〝抜く〟ことになりそうだ。

学術視点の協会

 これらの状況を踏まえ、18年10月に「日本杭抜き協会」が設立された。既存杭と、その引き抜き工事について、全国初という〝学術的〟な要素を加えて追究する。代表理事は、芝浦工業大学准教授の稲積真哉氏が就任した。地盤環境工学の専門研究を生かし、関連学会と連携しながら、この問題に踏み込んでいく。

 新しい同協会には、既にこの問題に警鐘を鳴らしてきた、既存杭引抜工法協会(桑原秀一会長)、地中埋設物撤去技術協会(浜口伸一理事長)が発展的に合流し、19年4月から本格的に始動する。

 活動の目標は、「現状では専門業者や団体の独自ルールに基づき、特別な公的規制がない」(稲積代表理事)実情があり、工法の基準づくりやガイドラインづくりなどになる。現在、杭抜き工事は解体工事の一工程だが、その重要性や必要性を提示し、独立した工種への地位向上で認知度も高める。社会への問題意識の啓発が最も大きな課題だ。

土地活用に障害

 同協会では、引き抜くことと同様に「埋め戻し」を重要視する。不完全な孔の埋め戻しは、隙間や軟弱部を発生させ、土塊やガラの破片が混入する。実際に杭抜き孔が陥没したケースの相談が、既に同協会に寄せられている。埋め戻しが適正でなければ、跡地や空き地の活用は進まず、日本の貴重な資産を棄損する。

 また、同協会では特に、建設技術者の〝倫理観〟が最も大事だと唱えていく考えだ。既存杭は、従前建物の施工図書などで調査を行い撤去するが、その書類のずさんさを指摘する声もある。それらの問題や実務の側面などについては、次回で紹介したい。

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