もりぞう(東京都中野区) 木曾ひのきを住まいづくりの原点に 幾世代も〝住み継ぐ家〟を形にする
住宅新報 2019年1月29日 号 11面
静けさが広がっている。夏は気温40度、今のような冬の時期には氷点下15度に下がる。御嶽山系と木曽山脈に囲まれる長野県南西部の山間に木曽谷はある。激しい寒暖差で、木曾ひのきには緻密な年輪が重ねられる。1センチの幅に約10本もの年輪が詰まる細やかな木目は美しく、高強度・高耐久性を叶える。貴重で希少なことから、伊勢神宮の御用材にも使われている。
朝早い静寂の中、空高くに湯気が立ち上る。木の乾燥工程から出る水蒸気だ。自然状態では2~3年掛かるところ、圧力釜の乾燥器で1週間ほど乾燥させる。いったん含水率を10%に下げ、15%程度に戻す。乾き過ぎると大気の水分を吸ってしまう。経年変化の少ない安定した品質を保つのに欠かせない工程だ。
高い技術と経験で
木曾ひのきは、中部森林管理局が厳密に管理する国有林の森で静かに育つ。木曽谷で生産されるのは樹齢40~120年、高い背丈ならば重量が1トンを超す。山は険しく切り立ち、きつい急斜面ではクレーンなどを搬入できない。時にヘリコプターでも搬出するが、昔ながらの「架線集材」と呼ぶ、ロープウェーのような装置を組み上げて搬出しなければならない。谷から谷へワイヤーを張る。木を吊り上げ、集積場まで搬出する。高い技術と経験が求められ、危険も伴う。総重量500キロを超える架線資材は〝人力〟で運ばなければならない。
〝特選一等〟を採用
もりぞうが使うのは、特別に厳選された「マル高マル国・木曾ひのき」(マルコウマルコクキソヒノキ)という、樹齢80年を超える良質なひのき。柱材には、国産ひのき生産量のうち年に0.1%しかない「特選一等」級材を用いる。曲げ強度や加工精度、含水率で高い基準を満たしたものだけを、そう呼ぶ。
一般的に木曾ひのきは、伐採後も約200年にわたり強度が2~3割も上昇して成長を続ける。その後、1000年以上を掛けて元の強度に戻る不思議な力を持つ。心柱にひのきが使われている法隆寺五重塔が1400年以上も世界最古の木造建築物として今も在るのは、そのためだ。
その堅牢な木曾ひのきの「特選一等」級材を使うことに、もりぞうの並々ならぬ〝こだわり〟を感じる。「単に100年住宅ではない。その後も幾世代にもわたって〝住み継ぐ家〟がコンセプト。家族のライフステージの変化を見守る住まいづくりを大事にする」(もりぞう東京支店長の初鹿史典氏)。
和の伝統的意匠を
この貴重な木曾ひのきの魅力を更に引き出すために、デザインや、空間の快適性にもこだわる。流行に流されず、本質をまっすぐに見つめる。日本家屋の伝統的意匠を取り入れた造形美。日本人が古くから親しむ四季の美しさや風情の豊かさを感じられる普遍性。これらに、未来に引き継ぐ現代の感性も加えた「和モダン」の〝形〟を表現する。存在感のある大黒柱には、品格の高さが感じられる。
実際にモデルルームで体験もできる。その一つが〝生まれ故郷〟の木曽谷にある。今冬に記者が宿泊体験ツアーに参加して1泊したところ、吹き抜けなどで開放的な大空間でありながら、裸足でも床から温もりが伝わる。柔らかな暖かさを身体の全体で感じた。陽射しの取り入れ方や風の通り道を意識する「パッシブデザイン」の設計手法を採用し、「わずかな暖気を与えるだけで、床下を徹底管理して暖かさを実現している。素材感と快適性を併せ持つ空間の演出は、宿泊体験ツアーに参加する皆さんの好評になっている」(初鹿支店長)。
宿泊体験の一夜が明け、爽やかに目覚めたのは、築後15年でも続く、ほのかなヒノキの芳香だけではない。「フィトンチッド」と呼ぶ木から発散する森の香りの成分が血圧を抑えて脈拍を落ち着かせ、「ヒノキチオール」の成分にも防虫効果があり、これらに心地よさを感じる〝癒やしの効果〟があると後で知った。
パートナー関係の強み
もりぞうがこの木曾ひのきを安定的に確保できるのは、63年創業で木曽谷で50年以上、山を知り尽くす、勝野木材(長野県木曽郡南木曽町)とグループ会社ヤマカ木材(同町)とのパートナー関係が大きい。前述のモデルルームは、製材所の隣地にある。
同社グループは、天理教神殿や神奈川県の寒川神社などにも納入している。「住まいづくりで他社と差別化してアピールできるのは、見えない価値観ではないか。五感に伝える特長をアピールできないと、顧客の満足度は得られない。その技術を持つことが問われている」(勝野木材で3代目社長の勝野智明氏)。
木を正しく使う
同社グループでは、国有林の木曾ひのきで搬出許可のある年6万m3のうち、実に2万m3を搬出する。「作業員の最高齢は78歳。今も現役で、技術を承継している。現在、木曽谷や木曾ひのきを守っているのは、気候や風土だけでなく、この地で働くために他県から来た若者たち」(ヤマカ木材常務の勝野泰平氏)。住宅の資産価値を高めるのは木の強さなど「品質にある」として、立木伐採から搬出、製材、乾燥、仕上げ加工まで、同社グループで一貫体制を敷き、品質管理を徹底する。もりぞうが用いている「特選一等」級材は、木曽谷の公売市場に出回る木曾ひのきの柱材になる良材の9割を扱う勝野木材でも、1年間に産出できるのは最大で250棟分しかない。この希少性が、住まいに更なる価値を与える。
宿泊体験ツアーでは、勝野社長が山や木曾ひのきなどのことを丁寧に説明してくれる場面がある。実は、木には「向き」があるのだという。地面から生えていた方向と天地を逆に使うことを「逆木」(さかぎ)という。正しく木を使うことも、良い住まいづくりには欠かせない。そうした木を知り尽くすプロたちと強いパートナー関係を持つもりぞうは、15年にレオパレス21の企業グループに入った。今後、この連携により、どのような住まいの極みを見せてくれるのだろうか。(坂元浩二)


























