流通現場で多様な働き方模索 〝寛容な場づくり〟で好循環を
住宅新報 2019年1月1日 号 18面
大手は制度創設進む 不動産流通推進センターが発行する「2018不動産業統計集」によると、17年3月の不動産業就職者の男女内訳(4年制大学卒業者)は男性7511人(58.2%)、女性5389人(41.8%)。男女共に10年3月以降は増加傾向にあり、女性が占める割合は4割超が続く。また、18年度の宅地建物取引士資格試験の受験者数(うち合格者数)を見ても、男性14万5245人(2万1838人)、女性6万8748人(1万1522人)。合格者の構成比は近年、女性が3割を超えて増えており、流通現場での女性の活躍がますます期待される。
東急リバブル(榊真二社長)は18年3月、厚生労働大臣から女性活躍推進法に基づく「えるぼし」最高位認定を受けた。同社では中島美博会長が社長に就いた12年から女性活躍の職場づくりを推進。施策は(1)「部署や制度の立ち上げ・整備」、(2)「現場の意識改革」と「女性社員のキャリアアップ」(育休復帰後の働き方の選択など)、(3)「働き方へのアプローチ」と3段階で進展し、異業種大手20社によるプロジェクト「エイジョ(営業女子)カレッジ」などにも参加し、女性営業職の課題を検討してきた。同社の榊社長も日米の不動産流通業の未来を考える講演会で、「売買仲介の営業ではコンサル力が問われる時代。女性ならではの生活者視点、きめ細かい心配りが発揮できる現場」と女性活躍の可能性について言及している。
また、賃貸仲介大手のハウスコム(東京都港区、田村穂代表取締役社長執行役員)は昨年12月に人事制度を改定し、保育手当(子供が3歳になるまで毎月1万円支給)や奨学金返済支援制度(最大15万円を夏季賞与に上乗せ)など新たな従業員支援制度を開始した。子育て中の社員と若手社員の支援強化を目的に、社員のライフステージの変化に柔軟に対応。制度改革と同時にAIなど不動産テック分野の強化による業務効率化を推進するほか、多様な働き方を支えるため、短時間正社員やがん治療サポート、定年後再雇用など各制度も導入している。
このように大手では働き手の目線に立った制度を示し、キャリア形成の形づくりや現場の意識改革を図る動きが見られる。社員の職場環境への納得感は事業推進の原動力となり自己研鑽の活力ともなるためだ。企業文化の醸成には継続的な取り組みが不可欠だが、経営の透明性と適切な評価を持って継続していく姿勢が求められる。
全国ネットの結束も 人材確保は地場の不動産会社にとっても重要課題だ。昨年12月には埼玉県宅地建物取引業協会(内山俊夫会長)が埼玉県ウーマノミクス課と「働く女性応援セミナー」を初開催するなど、女性活躍推進の萌芽は地場企業にも広がりつつある。講演者の清水亜希子氏(エフコネクト社長)は、参加者自身が「女性活躍推進」を自分ごととして受け止める姿勢が前提となると指摘した上で「従業員の『大切にしたいもの』はライフステージによって変化する。ワークライフバランスとはそれを大切にすることであり、企業が汲み取れるかどうか。仕事と生活の相乗効果は生み出せる」と強調した。
また、不動産フランチャイズ(FC)を展開するセンチュリー21・ジャパン(東京都港区、長田邦裕社長)は16年2月、加盟店女性営業職の懇親を深める女子会「なでしこC21」を結成。18年7月には宅建資格講座に定評のある企業らと協業し、10月の宅建士資格取得と再就職の支援を始めるなど、業界で働く女性のキャリアアップを推進する。同社でも仲介営業に必要な資質をコンサルティング力(提案力)と捉え、「コミュニケーションや相談のしやすさ、緊張を解く力が求められる。住まい選びの意思決定は女性が握ることが多く、同性による共感力、ニーズの把握力は女性営業員の強み」(同社広報)と活躍を期待している。
全国約140店舗の売買仲介専門FCを展開するイエステーション本部(東京都新宿区、井上洋社長)は、女性営業事務員にスポットを当てる。同本部では、「会社の状態や社員を最も観察できるポジションにいるのが営業事務員。営業社員や経営者の実務をはじめ、モチベーションを支える環境改善案は売り上げに直結する」(加盟営業推進企画部・山下智弘氏)と11年12月、女子力向上委員会(女子会)を発足した。
メンバーは女性営業事務員で、全国の加盟店の7割が参加。地域ごとに5支部に分けて、それぞれ2年交代で各地域の女子マネージャーを選出し、勉強会を実施している。接客対応や資料作成などの業務能力と、明るい職場づくりを支える〝オアシス力〟の向上が課題。同本部では「小規模な加盟店が多く、営業事務員にとって個社では行動指針や課題の見直しが難しい。全国から集まる女子会を通し、会社の改善点を発信してほしい」(山下氏)と、今後の支援にも注力していく考えだ。
限られた時間の中で効率的に企業に最大限の成果をもたらす働き方の模索は個々人にとっても今後の課題だ。一方、その工夫と貢献は企業にとってプラスとなるはずだが、その働き方を評価する尺度や文化を企業は育てていく覚悟があるだろうか。当然ながら人生の選択基準は従業員個々の生き方、ライフステージに由来する。様々な人材の多様性を認め、寛容さを発揮する企業であれば、人材不足の時代であっても好循環は生み出せるのではないか。

























