本コラムでは度々「エスキース」という言葉を使っていますが、エスキース=Esquisseとはフランス語でスケッチや下絵のことです。例えば、画家が絵を描く前に自分の描こうとしている絵のイメージをラフに描きだしたものです。漠然としたアイデアから一歩進め、イメージを固定するための作業と言えます。
建築家がエスキースを描くときには、全体のイメージはもちろんですが、個々の空間イメージ、動線のイメージ、ディテールや構造のイメージなどを、ある意味まとまりなく書き散らします。この書き散らすという作業が重要で、形態などは幾重にも書き込んだ線の中から、決定的なイメージが浮かび上がってくることがあります。また、建築家によってはスクラップブックやコラージュのようなエスキースを造る人もいます。
筆者が若い頃師事していたアトリエ派の師匠は、形態的なイメージのエスキースにはとても面白い方法を使っていました。まずは大きな黒い紙を製図板いっぱいに広げ、白いチョークと墨汁を用意します。師匠はチョークで自由闊達に線を描き、あるフォルムを描き出しますが、気に入らない線は墨汁を塗って消していきます。























