不動産現場での意外な誤解 賃貸借編111 貸家売買で貸主の地位を留保したら?(1)
住宅新報 2018年12月11日 号 3面
連載: 不動産取引現場での意外な誤解
Q 以前に掲載された「賃貸借編110」の記述の中に、貸家を居抜きで売買した際に、当事者間で貸主の地位を売主に留保しても、単に特約をしただけでは貸主の地位は買主に移転してしまい、敷金の帰属問題だけが残るということが書いてありました。しかし、その理由がよく分かりませんでした。
A その理由というのは、要は平成11年3月25日の最高裁の判断の中で、「新旧両当事者間において、従来からの賃貸借における賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨の合意をしたとしても、これをもって直ちに(敷金の帰属についての)特段の事情があるものということはできない」。すなわち、「敷金の帰属問題は別だ」と判断しているからなのです。
Q なるほど。それで、このたびの民法改正で、「不動産の賃貸人たる地位の移転」という見出しの新設規定(605条の2)を設けたのですね。
A その通りです。この新設された規定には、(1)賃貸物件が譲渡された場合には、それに伴って賃貸人の地位が譲受人に移転すること(1項)、(2)賃貸人の地位を譲渡人に留保するには、その要件として、留保の合意のほかに、譲渡人と譲受人との間で新たに賃貸借契約を締結すること(2項前段)、(3)そしてその新たな賃貸借契約が終了したときは、その留保されていた賃貸人の地位が譲受人に移転すること(2項後段)、(4)それらの地位の移転に伴って、賃借人が投下した費用の償還債務や敷金の返還債務が譲受人に承継されること(4項)などが定められています。
Q しかし、その新設規定(605条の2)の4項をよく見ると、「第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、敷金返還債務等が譲受人等に承継される」となっています。そうなると、この改正法の規定においても、賃貸人の地位が譲渡人に留保されている間の敷金の帰属先については何も定めていないということになりますが。
A その通りです。その留保期間中のことについて、改正法があえて明文を設けなかったのは、そうすることによって、契約当事者の多種多様な取引の実情に合わせた運用ができるように、当事者の自由意思に委ねたのではないでしょうか。
渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男






















