一般財団法人日本不動産研究所(23) 地域資源を生かす ~まちづくりからインバウンドまで 東京・台東産業衰退から再興 デザイナー生み出す拠点 残るモノづくりの原風景
住宅新報 2018年10月16日 号 14面
人口が集中し続ける東京にも、地場産業衰退や地域住民の高齢化による児童数減少といった理由から統廃合する小学校がある。03年に廃校となった旧台東区立小島小学校もその一つである。
昨今の旺盛なインバウンド需要を背景に、訪日外国人旅行客数は右肩上がりの状況にある。中でも台東区は、「日本らしさ」を感じられる多数の観光名所があるエリアであり、外国人観光客は、16年に約830万人(14年比57.8%増)を記録した。
「デザビレ」誕生
「日本らしさ」は、文化的価値のみならず経済価値も顕著に認められるようになり、日本人自身も「日本らしさ」を見つめ直そうとする機運が高まっている。
廃校となった旧台東区立小島小学校は、観光名所に挙がらない「徒蔵(かちくら)エリア」にある。「徒蔵エリア」は、通称「御徒町~蔵前~浅草橋にわたる2キロ四方の地域」で、様々なジャンルの工芸の中小零細製造加工業・卸売業が今でも集積する「モノづくり」のまちである。
古くから日本人は、モノに生命が宿ると信じて慈しんできた。日本人は、つくったモノに命を吹き込むのだから、日本製のモノは丁寧で高品質であり、それが世界中から評価され、日本の高度経済成長期を支えてきた。しかし、中小零細製造企業型の在来タイプの日本のモノづくり産業は、古くから下請け生産にとどまり、イノベーションが生まれない産業構造も相まってグローバル経済の時代に突入して以降、競争力の低下を招き全国で衰退した。
「徒蔵エリア」も例外ではなく、1928(昭和3)年に関東大震災の復興小学校として建設された旧台東区立小島小学校は地域衰退の影響を受け統廃合の対象となった。
250社が参加
小学校の統廃合を検討していた台東区は、廃校する校舎の利活用方法を検討し、たどり着いた構想が、区内のモノづくり産業にイノベーションを提供するデザイナーを生み出す拠点を整備し、まちの再興を促そうとするものだ。こうして04年4月、デザイナーに対する創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ(通称「デザビレ」)」が誕生した。
「デザビレ」は、他の創業支援施設と同様、当初は目に見えるかたちで成果を上げなかったが、今年5月に開催されたまちとモノづくりに触れるイベント「第10回モノマチ」では参加企業が約250社(第1回は16社)を超え、多数の来場者を集めるようになった。
明治維新以降、西洋的価値観を取り入れた日本は、経済効率に劣るものをどんどん廃絶し高度成長期を経て経済大国となった。「徒蔵エリア」も大通り沿いを中心に、高層共同住宅地域になっているが、「日本人のモノづくり精神」のたすきはデザビレが媒体となり一部でしっかりとつながり、高度経済成長期を支えた「日本らしさ」のあるモノづくりの原風景が残った。(本社事業部、不動産鑑定士・立石正則)


























