空間を取り巻くデザインの潮流(下) 三井デザインテックデザインラボラトリー クロスオーバーデザインとは 新たな空間価値を創出
住宅新報 2018年9月25日 号 5面
これまで2回にわたり、働き方と暮らしの変化や空間における自然共生など、これから重要となる空間のあり方やそのデザインの背景について説明してきました。
ミレニアル世代が鍵
空間を取り巻くデザインの潮流で見逃せないのが、ミレニアル世代(2面、今週のことば)の価値観です。この世代の影響はますます大きくなり、彼らが価値を見いだすライフスタイルの融合やコト体験こそが豊かさの指標になってきています。
空間においても住宅のくつろぎを取り入れたオフィスや、仕事場としての要素を持つホテルなど、デザインは既存のカテゴリーの枠を超えたクロスオーバーをし、更にはその空間を構成するエレメンツにおいてもハードやソフトが一体となった新たな体験価値が求められるようになっていくと考えられます。
そして当社は、このような新しい価値を持つ空間の考え方を「クロスオーバーデザイン」と名付け推進しています。
私が若手デザイナーのコンペティションの審査員として毎年招へいされているマレーシア国際家具見本市で、16年にこの「クロスオーバーデザイン」の考え方を発表し、この考え方に共感した主催者より、ロンドンで開催される世界的ホテルデザインのコンペティション「SLEEP」へ、アジア企業として初めて参加招致を受けました。
このコンペティションで当社が提案した空間は、エスタブリッシュな富裕層に向けた新たな体験価値のあるホテル客室のデザインでした。精神的ラグジュアリーをコンセプトに、和と洋の世界や住宅とホテルの要素がクロスオーバーした空間デザインを提案し、審査員特別賞を受賞しました。
世界的潮流に
このようなデザインやコンセプトが欧州のホテル業界関係者に支持され受賞できたことは、まさに体験価値が重視され、ラグジュアリーの価値観が変化し、ヒト、モノ、コトにおけるクロスオーバー化が世界的規模で起きてきていることの表れであると確信しました。
デザインの潮流を観測する上で欠かすことのできないものに、世界最大のデザイン見本市ミラノサローネがあります。
私の率いるデザインラボラトリーは、ミラノサローネについて毎年調査していますが、今年は、インテリアブランド、家電メーカー、IT事業者など、あらゆる業界がミレニアル世代の価値観にけん引される新しい暮らしの提案を行っていました。
住宅に遊びの要素や仕事の要素などあらゆる場の価値がクロスオーバーされ、住宅のハードとデジタルテクノロジーが一体化したような提案が大きな注目を集めていました。
このことは、これからの真の快適な暮らしを実現させる空間づくりには、ディベロッパーや家電業界、IT業界などという従来の縦割りの産業構造にとらわれない連携が重要になるということを示しています。
オープンイノベーションを推進し、作り手側の協創を加速することが、新しい価値のある空間デザインの創出につながっていくのです。
既成の枠を超えクロスオーバーの価値を創ることのできるプロデューサーやデザイナーの役割が、新しい時代の豊かな生活を提供する鍵となるのではないでしょうか。
(筆者=見月伸一)
=終わり
みつき・しんいち=デザインラボラトリー所長兼デザインマネジメント部長、マーケティング推進室長。マレーシア国際家具見本市若手デザインコンペティション審査委員。国内外でのデザインコンペ受賞。世界最大のインテリア見本市ミラノサローネを13年間定点観測し、毎年トレンドリポートを発表。国内外で講演多数。
























