北海道・倶知安町 スキー人気で不動産投資活発化 地価上昇著しく移住人口も増 長期滞在型施設に投資需要
住宅新報 2018年7月31日 号 19面
観光庁は7月20日、「G20観光大臣会合」を北海道虻田郡倶知安(くっちゃん)町のニセコHANAZONOリゾートで19年10月に開催すると発表した。観光分野における世界的課題を主要・新興20カ国(地域)の閣僚が議論する催しで、議長国の日本としては、世界の観光分野のVIPにニセコ地域をアピールする目的もある。
同町の西江栄二町長は同会合の開催日程決定を受け、「住民や宿泊施設と連携を図りながら、オール倶知安体制で、世界的な国際リゾート地である倶知安の更なる観光地、投資先としての魅力を世界中に伝え、倶知安の一層の発展に繋げていきたい」とコメント。同会合への協力に意欲を見せた。
倶知安町は人口1万5327人(6月末現在)で、決して規模の大きな自治体ではない。しかし、同町とニセコ町を中心としたニセコ地域は、ハイクオリティな雪質のスキーリゾートとして、21世紀初め頃から世界的に有名な観光地となっており、インバウンド観光客数は上昇傾向が続いている。特に、「時差が少ない」「季節が逆でハイシーズンが補完関係にある」などの理由から、オーストラリアからの観光客が極めて多いという特徴がある。
同町の集計によれば、17年度に同町を訪れた外国人観光客の宿泊者数は14万2857人で、延べ宿泊日数は43万3685泊。このうち、オーストラリア人が占める割合は宿泊者数2万7122人(19.0%)、延べ日数9万6545泊(22.3%)で、2位を大きく引き離す1位だ。
しかし08年のデータを見ると、宿泊者数は2万4570人で延べ宿泊日数は13万9083泊で、オーストラリア人はこのうち宿泊者数1万1072人(45.1%)、延べ日数8万3665泊(60.2%)。全体として大きく増加しているだけでなく、訪れる観光客の国籍も多様化し、08年当時に外国人観光客の半数程度を占めていたオーストラリアの割合が、現在は相対的に下がっている。
同地域の中核的なスキー場の一つ「グラン・ヒラフ」を運営する、東急リゾートサービス(東京都港区、熊沢基好社長)のスキー事業統括部運営管理部の兼子真一部長は、「オーストラリアからの訪日客は引き続き多いが、近年はアジア地域からの観光客が増えている。地理的に近いこともあり、ニセコの観光地としての認知がアジアでも進んだ結果だろう」と話す。
旺盛な不動産投資
観光客の増加に伴い、当然宿泊施設や飲食店などの開発・出店も活性化しており、同町の不動産価値は急激な上昇を続けている。18年の公示地価では、住宅地・商業地共に同町が全国最高の上昇率となった(表参照)。更に、路線価では1m2当たり32万円で前年比88.2%増と、爆発的な上昇で全国首位の変動率だ。
公示地価の上昇について、国土交通省は「ニセコ観光圏の一翼を担う倶知安町では、外国人観光客の増加に伴い、店舗や施設従業員用宿舎の需要が高まっている。また、北海道新幹線建設工事の進展や外国人による別荘地としての取得需要もあり、これらの複合的な要因により地価が大きく上昇している」と分析する。
倶知安町役場観光課は「地価上昇の要因は、やはり不動産投資の取り引きの活発化。行政側の施策というよりは、ほぼ観光客自身からのニーズと民間事業者の取り組みの成果」と率直に話す。加えて、「近隣のスキー場を所有する国内事業者だけでなく、海外の事業者による投資や開発が多く、外国籍の関係者の定住はもちろん、冬の間だけ町内に居住してビジネスを行うケースも増えている」と近年の状況を語る。
実際に、6月末現在の同町の外国籍住民数は645人で町民の4.2%を占めており、これも08年と比べて倍以上に増加している。つまりインバウンド観光の活性化は、観光客による消費だけでなく海外資本の投入にもつながる上に、街のあり方も大きく変えており、同町はその典型的なケースの一つと考えてよいだろう。
リゾートとしての宿泊施設の開発傾向に関して、同課は「特に別荘タイプの1棟ものと、ホテルのようなサービスを提供する分譲リゾートマンションが多い」と見る。
また兼子部長も「一般的なホテルももちろんあるが、新しい施設はコンドミニアムのような長期滞在向けの物件が多い傾向にあり、当社としてもそういった需要への対応は行っている」と述べており、日帰りや1泊程度の滞在ではなく、長期的に逗留してスキーや観光などを楽しむという観光需要が高まっている様子を示唆している。
「よし悪しあるが…」
観光客の長期滞在が増えた場合、その地域での消費活動などプラスの影響がある一方、騒音やごみの問題など、近隣住民の生活へのマイナス影響も懸念される。
それについて同課は、観光に限らず、人が増えて街が活性化すれば一定程度の社会的な課題は増えるものだという見解を示しつつ、「リゾート地特有の問題というのは、実際に発生している」と述べるにとどめた。
同様に兼子部長も、開発の進展によって「よいことも悪いこともあるのだと思う」と語る。しかし続けて、「その上で近隣住民としても、『地域の活性化はよいこと』と受け止めているように感じる。当社としては、今後も重点的に同地域の事業に取り組んでいきたい」と意欲を見せる。
政府目標や民間による調査などを見ても、我が国の観光客数は20年の東京五輪を越えても成長を続けると予想されており、必然的に宿泊需要とそれに伴う不動産投資は続く見込み。とはいえ、地域によるニーズの濃淡は必然的に発生するだろう。
そうした中、倶知安の事例を見る限り、観光地としての独自性を生かしたアプローチは、持続的なインバウンドニーズの獲得のため極めて重要と考えられる。更にもう一つ、住民との共存による地域活性化も重要ではないだろうか。
ニセコ地域の特長についての評価や解説を見ると、これまで挙げた要素のほか、「ホスピタリティの高さ」を指摘する意見が多い。それも大手事業者によるリゾート施設だけでなく、地域全体でインバウンド観光客を歓迎し、盛り上げていこうとしている様子がうかがえる。
確かにリゾート開発や爆発的な地価の上昇は、功罪両面があるのだろう。しかし今のところ同地域では、地方自治体と民間事業者、そして住民がそれぞれのアプローチで「観光地・ニセコ」のために前向きに努力しており、それが功を奏して高い人気という形に結びついていると考えられる。

























