一般財団法人日本不動産研究所(11) 地域資源を生かす ~まちづくりからインバウンドまで 静岡県牧之原台地 約5千ヘクタールの茶畑が広がる有数の生産地 お茶ブームで観光スポットに
住宅新報 2018年7月17日 号 12面
静岡県は全国のお茶の生産量の約4割を占めるお茶処である。このお茶処静岡を支える一大産地が牧之原台地を中心とした地域である。
牧之原台地は静岡県のほぼ中央に広がり、島田市、牧之原市、菊川市にまたがる広大な台地である。この台地に総面積約5000ヘクタールの広大な茶園が広がり、新芽が芽吹く新茶の季節になると、辺り一面は萌黄色に染まる。さらに、台地上から東方を眺めると遠くに富士山と南アルプス山系、眼下には大井川の雄大な流れのパノラマが広がる。
徳川家家臣らが開墾
牧之原台地は温暖な気候のお茶栽培に適した台地だが、もとは砂礫に覆われる未開の荒れ地で、農業用水の確保も難しく、地元農民からも見放された土地だった。江戸時代末期から、開国により海外貿易が開始され、生糸やお茶が当時の主要な輸出品となっていた。また、江戸幕府が崩壊し、明治期に移った頃になると、多くの武士も職を失うなど日本国内は大きな変換期を迎えようとしていた。
そうした時代に駿府城下(現在の静岡市)にも江戸から移り住んだ最後の将軍徳川慶喜に従って、徳川家の家臣が多く移住してきた。失業を余儀なくされた家臣を中心に、大井川の川越人足も加わり、新たな職を求めて牧之原台地を茶園として開墾したのがそのはじまりである。その後、昭和に入り大規模な潅漑事業が行われたことで、確固たるお茶の一大産地となったが、その歴史は、開拓してから150年ほどと意外と短い。
このお茶の一大産地としてのイメージが強い牧之原台地を中心とした地域だが、98年4月にお茶に関する様々な情報を発信する拠点施設として広大な茶畑に囲まれたお茶専門の博物館として「お茶の郷」が開館した。更に、今年3月に茶摘み体験、手もみ体験、抹茶挽き体験、茶道体験など様々なお茶にまつわる体験に力を入れた「ふじのくに茶の都ミュージアム」と名称も変更してリニューアルオープン。来年5月にはここを会場として「世界お茶まつり」が開催される予定である。
空港でき交通拠点に
一方、09年6月に牧之原台地から東に伸びる尾根部に、富士山も眺めることができる「富士山静岡空港」が開港。国内線は札幌、出雲、福岡、鹿児島、沖縄方面へ、国際線は中国、台湾、韓国の各都市へ就航しており、国内外の玄関先として交通拠点としての役割も担っている。17年度の搭乗者数は約67万人である。
更に「ふじのくに茶の都ミュージアム」の近隣にある、島田市が所有する旧金谷中学校跡地には21年3月、交流・にぎわいの拠点としてアウトレットモールがオープン予定である。
徳川家の家臣が中心となり開墾された国内有数のお茶一大産地である牧之原台地は、平成に入り、茶畑としての利用だけではなくミュージアム、空港の施設が整備されるなど、常に変化している。また茶畑も単なる作物生産としての場だけでなく、昨今のお茶ブームを背景に観光スポットとしての茶畑にもなりつつある。牧之原台地は、今後も広大な茶畑を中心に多様な役割を担って発展していくことが予想される。
(静岡支所、不動産鑑定士・鈴木隆史)

























