国交省 賃貸住宅標準契約書を改定 民法改正や債務保証業者利用増で トラブル多いサブリースにも対応
住宅新報 2018年4月10日 号 1面

業者に関する情報の記載欄(最下段)が新たに設けられた「賃貸住宅標準契約書(家賃債務保証業者型)」(国土交通省HPより)
「賃貸住宅標準契約書」は、賃貸借契約書のひな型として93年に作成されたもの。法令で使用を義務付けられてはいないものの、一般的にはこの契約書を基に業界団体などが地域性や実務面を考慮した契約書を作成して会員などに提供している。今回は、17年5月に成立、同年6月に公布された民法(債権法)の改正に合わせて内容の改定や解説コメントの追加を行った。
連帯保証人の確保困難に
民法改正が賃貸住宅の契約に影響を与える点としては、まず「個人の根保証契約において、保証する額の限度額(極度額=今週のことば)の設定の要件化」がある。これは賃貸借契約における借主の連帯保証人にも適用されるが、具体的な金額を見て親族なども躊躇(ちゅうちょ)してしまい、連帯保証人の確保が難しくなることが予想される。更に金額の目安がないため、額をめぐるトラブルが発生するケースも考えられる。
また同民法改正では、「賃借物が一部滅失などにより使用できない場合、その割合に応じて、賃料は当然に減額」としている。こうした場合の減額の程度などについても事例の積み重ねがなく、トラブルの原因になり得る。更に、日本賃貸住宅管理協会の調べ(16年度実態調査)によれば、近年では賃貸借契約の際は約6割が家賃債務保証業者を利用するなど、家賃債務保証の需要と利用ケースが拡大しているという社会背景もある。
家賃債務保証型を作成
そこで今回の改定では、従来は連帯保証人による借主の債務保証のみを規定していた標準契約書について、新たに「家賃債務保証業者型」を作成。頭書に家賃債務保証業者の所在地や商号、登録番号などの記載欄を設け、保証内容は別途契約によることなどを記した。そして従来の書式は「連帯保証人型」として、極度額の記載欄を追加すると共に、具体的な極度額の設定などのための参考資料を添付。合わせて2種類の標準契約書として提供を開始した。またどちらの型にも一部滅失についての規定や相談対応事例集が追加されている。
賃料改定リスク明記
今回は、通常の賃貸住宅の標準契約書と併せて「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」についても改定が行われた。同契約書は、建物のオーナーからアパートなどの賃貸住宅を一括して借り上げて入居者に転貸する、いわゆるサブリース事業の当事者間トラブルを未然に防止するため、オーナーとサブリース業者との原賃貸借契約書のひな型として作られたもの。こちらも法令で使用が義務付けられているわけではないが、同省が「最低限定めなければならないと考えられる事項」をまとめた内容だ。
この標準契約書は07年に作られたものだが、11年に賃貸住宅管理業者登録制度が施行されたことや16年に行われた同制度の一部改正、前述の民法改正といった、サブリース契約を取り巻く環境の変化を受け、今回条項の改定や解説コメントの追加が行われた。
具体的な改定としては、まず頭書に初回の賃料改定日などの記載欄を追加し、「賃料改定日には貸主(オーナー)と借主(サブリース業者)との協議により賃料を改定できる」「賃料改定日以外でも賃料が改定される場合がある」と明記。これは、「サブリース契約が賃料保証と誤認されることがあるため」(同省)に、あらかじめ注意を促したものといえる。また、借主から契約を解約できない期間を設けてその記載欄を追加すると共に、その期間内であっても貸主・借主の協議によって賃料が改定される場合があることも書き加えた。
そのほか、「借主による転貸時の民泊可否に関する事項追加」「管理状況の定期報告規定」などに加え、原状回復や敷金返還の基本的ルールも明記している。
「サブリース標準契約書」にこうした内容が追加・明記された背景には、近年サブリースを巡るトラブルなどが発生しているという事情もある。そのため同省は3月27日、消費者庁と連携してサブリースに関するトラブル防止に向けた注意喚起のため、サブリース契約を検討している人やサブリース住宅に入居する人へ向けて、主な注意点や相談事例などを公表している。
オーナー向けには「賃料は変更になる場合がある」「契約期間中でも解約されることがある」といった注意点を公表。併せて、サブリース契約をする場合は、契約内容や賃料減額などのリスクを十分理解してから契約するよう呼びかけている。
サブリース住宅の入居者に対しては、「オーナーとサブリース業者との契約(原賃貸借契約)の終了により退去しなければならない場合がある」「サブリース業者に賃料を前払いしている場合、オーナーに対して二重に支払わなければならないことがある」と注意を喚起。こうした不利益を受けないよう、入居物件がサブリース住宅か確認すると共に、原賃貸借契約に「契約が終了した場合の地位の承継規定」があるかどうか確認することを推奨している。
賃貸管理も分別管理など
更に同省は、3月30日に「賃貸住宅標準管理委託契約書」も新たに策定した。これまでは、貸主が賃貸管理業者に対して賃貸住宅一棟全体の管理を委託する際の標準契約書としては、宅建業者が賃貸住宅の代理と併せて管理を行う場合の「住宅の標準賃貸借代理及び管理委託契約書」が94年に作成されて以降、改正などは行われてこなかった。
ところが実態として、賃貸住宅の代理と併せて管理を行うケースは少なく、また代理については別に「住宅の標準賃貸借代理契約書」が存在する。そこで今回、これまでの「代理及び管理委託契約書」から代理の業務を除くと共に、賃貸住宅管理業者登録制度との整合性も図り、新たに賃貸住宅管理業専用の標準契約書が策定された。
同制度に対応した見直し事項として、「財産の分別管理」や「管理事務の定期報告」などについて明記したほか、「実務経験者等の記名押印欄」を追加。また社会環境を踏まえ、「個人情報保護法およびマイナンバー提供に関する条項」「反社会勢力排除条項」などが追加されている。
これら3種類の標準契約書は既に同省から公表されており、民法改正に対応した改定部分は20年の施行以降を見据えた内容ではあるものの、現時点でも活用することが可能だ。そのため今回の改定・策定を受けて、業界団体などが提供する書式を順次更新していく可能性が高い。新たな標準契約書に応じた書式を使用できるようであれば、積極的に導入することが円滑な契約やトラブル防止などのために有効だと考えられる。


























