明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第223回 免震構造のランドマーク 外観を維持し地震にも強く 金子信孝 不動産学部1年
住宅新報 2018年2月27日 号 4面
【学生の目】
大学の長期休暇期間になると実家のある大阪に帰阪するが、帰るたびにいたる所で新しいホテルやタワーマンションの工事が行われている。不動産学部で建物について学んでいることもあり、建物の耐震性はどのように確保されているか、大規模建築物の近くでは公開空地によってどれほどの容積率割り増しや高さ制限の緩和を受けているかなどが気になり、観察するようになった。
先日、友人と串カツを食べようと新世界に行った際、久々に間近に通天閣を見た。通天閣は名前も豪快で、大阪府民に愛されているが、1912年に建立された初代は1943年に火災で焼失した。現在の通天閣は二代目で、焼失から13年、終戦から11年後の56年に建立された。展望台の高さはあべのハルカスに抜かれてしまったが、07年に国の登録有形文化財となり、大阪はいうに及ばず、日本のランドマークとなっている。
通天閣の耐震性について調べていると、14年に通天閣耐震・外装・設備改修工事というプロジェクトを行っていることがわかった。プロジェクトの特徴は、登録有形文化財のタワー上部の外観を変えずに、大地震でも倒壊しない塔に改修した点である。世界でも類を見ない中間層免震改修工事で展望タワーを免震化するとともに、棟の脇にあるエレベーター塔の内外装美化工事や初代通天閣にあった天井画の復刻を行っている。
耐震構造ではなく免震構造にした理由をさらに調べると、塔に地震動が伝わる耐震構造では、大きく揺れるタワー上部を補強するために構造部材の一部を太くする必要があり、登録有形文化財の外観が変わってしまう。また高所作業が必要になる。これに対してタワーの低層部に積層ゴムとオイルダンパーを使用する免震構造では、塔の上部に伝わる地震動が軽減されて全体がゆっくり揺れるため、大寸法の部材を追加する必要も、高所作業も必要ない。さらに工事中も営業を継続できるメリットもある。このため、耐震補強案より工事費が高いにもかかわらず採用された。
既存構築物の柱を切断してジャッキで支え、免震装置を入れる一方、調べなければわからないほど元の姿を変えない工法は不思議だ。高い技術力を生かして通天閣一帯の建物を集中的に免震改修すれば例のない防災先進エリアとして注目され、世界のランドマークになりそうだ。
【教員のコメント】
制御技術の進展が著しく車の自動運転が現実となった。動くものを感知し、必要に応じて制動をかける。運動エネルギーを熱に変えて止める点でブレーキと制震装置は共通する。レトロフィットの中間層免・制震は中古車に未来の安全を与える。
























