ことわざで、怖いもののたとえとして「地震、雷、火事、親父」と言いますが、親父の権威は地に落ちて久しく「地震、雷、火事、水害」とした方が実情を表しているようです。地球温暖化の影響か、夏季には集中豪雨が頻発するようになっています。併せて突風や竜巻なども多く発生し、その周辺部で起きるのが雷です。
気象庁の調べによると、東京都心の雷観測日数は7月が7日(平年2.3日)、8月が8日(平年2.5日)で過去最多を記録し、通年でも20日を超えています。雷の被害はゴルフ場やグラウンドで受ける落雷による被害(直撃雷)よりも、通信回線や電子機器の損傷による二次被害が目立ちます。この被害の原因となるのが誘導雷です。
誘導雷とは雷雲の中での相互放電現象や地上への落雷によって起こる電磁誘導現象です。強い電磁誘導現象が発生すると電磁界が大きく乱され、近くに敷設されているケーブル、電子機器などに誘導電流が発生します。誘導電流は高電圧を持ち、機器の焼損・破損を発生させます。強い雷の後にパソコンやTV、モデムが壊れる事故は誘導雷による異常電圧や誘導電流によるものです。また、誘導雷は電磁波も発生させ「誘導雷サージ(過渡的過電圧)」を起こします。誘導雷サージは数十μ秒~数百μ秒と非常に短い時間ですが、電気・電子機器にとっては過酷な電圧であり、機器を損傷、誤動作させます。
この現象を大規模かつ人工的に起こすのが「電磁パルス(EMP)爆弾」です。数百キロの高高度で核爆弾を爆発させ、広範囲かつ深刻な電子的被害を起こすことができ、北朝鮮が米国を威嚇するのに使っている技術です。
ネットワーク化も影響
物騒な話はさておき、近年誘導雷によるマンション被害が多数報告されています。具体的には電話回線の損傷による通話やインターネット接続の切断、インターホンやオートロックの切断による締め出し、テレビや分電盤の損傷、火災報知器の破損などがあります。また、火災発生に至るケースもあります。
誘導雷による機器の被害は修理というレベルではなく、破壊なので復旧には多額の費用が必要になります。直撃雷は避雷針などで回避できますが、誘導雷は発生回数が著しく多く、雷雲が消滅するまで何度でも機器やネットワークに侵入します。サージは空中から蜘蛛の巣のように張り巡らされている架線(電力・通信)を伝わって侵入し、数キロ四方に広がります。マンション被害が増加しているのはネットワーク化が広がっていることも影響していると考えられます。
誘電雷サージに関しては機器のスイッチオフなどは全く効果がなく、機器そのものを電源やネットワークから取り外すしかありません。また、直撃雷に比べ、エネルギー自体は大きくないため外見的な被害は見極め難く、装置内部のCPUやメモリを破損するのが誘導雷の厄介な点です。ほとんどのネットワーク装置は6~24ボルトで作動していて、そこに数千ボルトが流れ込むわけですからひとたまりもありません。
誘導雷被害を防ぐ効果的な方法としてSPD(Surge Protective Device・避雷器)の設置があります。SPDはネットワークと機器の間に設置し、瞬間的なサージをバイパスさせてアースに逃がし、機器や設備を保護する機器です。SPDには電源回路用と通信回線用があり、規格に合ったものを取り付けることが大切です。
(建築家・中村義平二)























