投資用ワンルームマンションの販売と管理を手掛ける日本財託で、顧客に資産コンサルティングの一環として家族信託の活用を提案している。家族信託とは不動産や預金などの資産を家族に託し、その管理や処分を任せる仕組み。近年、財産管理の一手法として注目されている。
それをテーマに2年前から開催しているセミナーは、昨年末で25回目を迎えた。「最近は開催告知から満席になるまでが非常に早い。関心の高さを実感している」。これまでに40件以上の家族信託契約に携わり、経験を積んできた。今では社外からの講演依頼も舞い込む。
関心の高まりの背景にあるのは認知症患者の増加。25年には700万人を超えるとの試算もある。そうなれば、どこの家庭にとっても他人事ではなくなる。
「認知症で判断能力が低下すると、本人の資産が事実上凍結されてしまう。子供であっても自由に親の預貯金の引き出しや所有している不動産の売却はできなくなる」
前もって家族で信託契約を結んでおけば、そうしたリスクを回避できると説く。「親が認知症になったときの金銭的な負担は意外と大きい。選択肢の一つとして知ってもらいたい」。このほど出した2冊目の著書でもその点を強調した。
実は、自身も家族信託を利用している。父親が認知症になった場合、実家を売却してその介護費用に充てるためだ。
やってみると思わぬ副産物もあった。「家族とはいえ、それぞれ家庭を持つと顔を合わせる機会は減少する。信託を機に介護のこと、相続のことについて話し合え、家族の絆が強まった」。
高齢者が元気なうちに資産の行方を決めておくことは、空き家の発生抑制にもつながる。不動産が塩漬けになるのを防ぐことも可能だ。日本は平均寿命が長く、高齢者の持ち家率も高い。「だからこそ家族信託の普及が不可欠。これからも社会的使命として取り組みたい」と意欲を見せる。
72年生まれ。(井川弘子)























