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スタンダード会員限定――まず売主、所有者の確認徹底―― 取引事故を防げ 「売り急ぎ」「安すぎ」は要注意

住宅新報 2017年9月19日 号 1面

総合
マンションやビルが林立する大都会。格好の空き家や空き地を狙っている地面師たちが跋扈(ばっこ)しているかもしれない

マンションやビルが林立する大都会。格好の空き家や空き地を狙っている地面師たちが跋扈(ばっこ)しているかもしれない

 今回の一件に関し、この大手住宅会社は、「弁護士や司法書士による関与のもと、所有者から契約相手先を経て当社へ所有権を移転する一連の登記申請を行ったところ、所有者側の提出書類に真正でないものが含まれていたことから、当該登記申請が却下され、以降、所有者と連絡が取れない状況に至った」という。事件の詳細はこれから明らかになるだろうが、プロが介在した取引でこうしたことが起こったということは、誰の身に起きても不思議がない。不動産適正取引推進機構発行のメールマガジンでもこうした事例は最近続発しているとし、特に本物の司法書士などが介在することで相手を信用させる手口が多いとしている。

注意すべき点

 もちろん、こうした事案は特別のケースであり、一般の取引で起きることはまれだ。であっても、流通市場活性化が叫ばれ、仲介成約件数の増加や、リノベーションの普及など不動産取引にいい風が吹いている中で、水を差すような出来事であり、安心・安全な住生活を目指して日々奮闘している住宅・不動産業界の人々の努力を水泡に帰すことにつながりかねない。

 こうした契約でまず注意すべき点は、主体だ。売買契約であれば、売主と買主が果たして権限があるのか、そもそも本人なのかということをしっかりと確認しなければならない。

 したがって、売主が所有者か、または売却について権限がある代理人なのかを調査することが必要だ。問題なのは、真実の所有者と登記記録上の所有権者が異なる場合だ。前記したような事案では、司法書士が「所有者を確認した」などと言って、所有者であるかのようにだましている。日本の登記には公信力(今週のことば)がないため、登記を全面的に信頼することも危険だ。松田弘弁護士は、「交渉を重ねている中で慎重かつしっかりと確認していくことが必要」という。

 この点で重要な役割を担うのが宅建業者だ。一般的な取引では、真の所有者であるかどうかは、運転免許証などの公的証明書であったり、実際に自宅に訪問するなど、慎重かつ確実に確認しているはずだ。欠かさず励行してほしい。

〝急ぎ〟に注意

 不動産を巡って詐欺が行われた事案で、よくあるのが決済を急いでいるふうを装うケースだ。本人確認のための資料を要求すると、「運転資金に回したいので決済を急いでいる。面倒なことを言うなら他の業者に売る」などといって逃れようとするのだ。あるいは、「自らがギャンブルなどで失敗した穴埋めなので、家族には内緒。家には来ないでほしい」などと自宅訪問を拒むケースもある。一般の取引では、このようなことはレアケースだろうし、相手側がこのようなことを言う場合は、契約そのものを結ばないほうがよいだろう。

今後も増加の可能性 空き家、空き地絡みで

 こうした〝なりすまし〟による取引事故は、これからも起きるのか。渡邊不動産取引法実務研究所の渡邊秀男代表は、「今後も増加していくだろう」と言う。その理由は、空き家、空き地問題の解決がなかなか進まないことにあるという。「所有者などの〝なりすまし〟は、当然ながら空き家や空き地のほうがなりやすいからだ」(渡邊代表)。空き家解消に取り組んでいる人物と思わせてだます方法もありそうだ。不動産会社に在籍したバブルの頃、こうした事例に遭遇した渡邊氏に対策を聞いた。

〝なりすまし〟対策は

 「まずは所有者確認だが、こうした事例の場合、完全に確認することは難しい。所有者らしいという蓋(がい)然性がポイントとなる。その見極めが大事だ」

 「登記や権利証といった書類確認だけでは足りない。取り扱う業者自身の心証形成が大事になる。そのためには、現場を見ること。例えば、家を見て、リフォーム・増築などがされていたら、『どちらの工務店でリフォームされたのですか』などと聞く。所有者をかたっていれば、すぐには答えられないケースが多い」

 「境界確認も重要。所有者になりすましている者は図面上では分かっていても、実際境界まではきちんと把握していないことが多い」

 後は、近所の人への聞き込みだという。「特に昔から住んでいるようなお年寄りに、所有者かどうか聞いてみるのがポイント」

 取引自体については、前記した「急ぐ取引」「安い取引」は危険であると共に、「一括決済するといって、司法書士や弁護士をいきなり同席させたり、議員の名刺を出したりするのは怪しい取引といえる」。

 不動産取引に詳しい、不動産適正取引推進機構客員研究員の村川隆生氏は、「犯罪収益移転防止法の観点からも本人確認が最も重要」とすると共に、経験豊富な宅建業者も気をつける必要があるという。「慣れている業者は経験則で、業務を流してしまいがちになる。経験則を踏まえて、もう一度確認することが肝要」としている。

   ◇  ◇ 

 大きな金額が動く不動産取引においては、少しの確認を怠ったばかりに大きな損害を被ることがある。もちろん、〝なりすまし〟は相当に巧妙で、熟練の宅建業者でもだまされる可能性はある。それでも、基本を外さないように業務に当たれば、通常の取引であれば被害は防げる。業に携わる人は、こうした事件を他山の石として、これまで同様、基本に則した業務に当たっていただきたい。

 

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