鑑定士協連レター 中国の新築住宅価格 潜在需要層、非常に大きな厚み
住宅新報 2017年8月29日 号 11面
中国国家統計局は毎月「主要70都市の新築住宅価格動向」を発表しているが、日本ではそのタイミングに合わせ中国の不動産状況が報じられることが多く、「バブル懸念」や「バブル崩壊」といった記事を目にする機会も多い。中国の不動産という場合、「新築分譲住宅」を指すことが多く、今回は「新築分譲住宅」市場について紹介したい。
◆主要70都市の価格動向
「主要70都市の新築住宅価格動向」には北京、上海などの1線級都市のほか、南京、蘇州などの2線級都市、洛陽、楊州などの3線級都市なども含まれるため、中国の全体的な住宅マーケットの傾向を掴む上では有用である。
15年に入ると各都市で住宅ローンに係る規制緩和などが影響し、1.2線級都市を中心に販売が好調となり在庫減少と合わせて、新築住宅価格は大幅な上昇を示した。こうした1.2線級都市を中心とした行き過ぎた価格上昇に対する警戒から、昨年の国慶節前後に購入時の頭金割合の規制などの購入制限が各都市政府より発表され、これを受けて成約量は大幅に減少した。
直近の17年5月で上昇した都市は56で、上昇数が最大となった昨年8月の64都市と比較すると減少し、やや価格調整局面に入ってきた感はあるが、全体としては新築住宅価格は依然高位で推移している。政府による購入制限を受けて需要減少がみられたが、一方で在庫消化が進んだことに加えて、土地供給が少なかったことで需給は悪化していない状況が確認できる。また今年に入り、成約量の減少が顕著な1.2線級都市に代わり、3線級以下都市での販売が好調となり、ディベロッパー・マーケットの主戦場は1.2線級都市から3線級以下都市へと移っている。
◆都市による相違
広大な国土を有する中国では、都市のランクや都市の所在する地域によってマーケットの違いが現れる。まず都市のランクでグループ分けして見てみると、近年息が長く価格上昇が続いてきたのが1線級都市で、近年は2線級都市にその勢いが波及している。
次いで、エリア別でみると最近では華東、華南の上昇が大きい一方で、東北エリアの上昇率が鈍いなどの動きも見られる。このように中国のマーケットは巨大で、都市のランクや地域などによって様々な価格形成要因が存在し、その動きを一括りに説明することは難しい。
◆北京と上海のマーケット
日本不動産研究所が17年5月25日に公表した「国際不動産価格賃料指数」(17年4月現在)によると、1線級都市である北京と上海の新築住宅価格指数は各213.1、169.0(10年10月=100)で、直近1年での上昇率は各43.6%、22.3%と際立った上昇を見せている。
在庫消化が相当程度進んだことに加え、新規供給が少ないことが、購入制限がある中でも値崩れしない原因の1つである。現在、上海中心部で分譲中の新築住宅は1m2当たり10万元以上(グロス面積)、総額2000万~3000万元(日本円換算で約3億~5億円)となることも珍しくない。市郊外では1m23万~4万元(グロス面積当たり)の水準にあり、総額で500万元以上(日本円換算で約8000万円)にもなる。東京都心部の住宅価格に割安感を感じる投資家も少なくない。
◆今後の見通し
土地の払下げ価格が新築分譲住宅価格よりも高いケース(「パンよりもパン粉が高い」とも言われている)も多く、将来供給される物件の価格が現在の価格よりも高くなることが容易に想像できる。そうした価格に消費者がどこまで追随できるかが今後焦点になってくる。一方、購入制限下でも購入する需要者が相応に存在し、価格も高位で推移している現状に鑑みると、日本とは比較しがたい潜在的な需要者層の厚みを感じる。
中国は第2次産業から第3次産業へと産業転換を推進し、さらに「一帯一路」などの政策を受けて、従来のエリア・都市の位置づけが変わり、不動産マーケットの見方も大きく変化していくといえる。今秋予定される共産党全国代表大会では国政の安定運営が必須となり、また政府のコントロールが効く「官製市場」という側面がある点を勘案すると、17年の住宅市場は大きく崩れることがないというのが、現地の多くの見方である。ただ、トランプ政権下での米中関係や中国経済の先行きなどの不透明要因もあり、今後の動向に注目する必要がある。
(不動研<上海>投資諮詢有限公司董事総経理、粕谷孝治<不動産鑑定士>)






















