一般財団法人日本不動産研究所(14) 全国市街地の変遷 ――昭和の記憶から次代へ 滋賀県大津市・駅と港の動線軸に活性化策 スーパー跡地などでマンション建設進む 琵琶湖生かし環境共生も
住宅新報 2017年8月22日 号 12面
連載: 全国市街地の変遷
中心商業地は衰退
大津市は琵琶湖の西南端に位置する滋賀県の県庁所在地で、人口約34万人の都市である。大津市は京都・大阪方面へのアクセスが良好であることから、近年は京阪方面のベッドタウンとして位置付けられている一方で、中心商業地では衰退が見られる。その要因としては(1)隣接する京都市に人的・経済的要素が吸引されること、(2)南北に細長い地形のため多核都市であること、(3)駐車場を備えた郊外型の大型店舗が集客力を強めていること―などが挙げられる。
大津市の中心商業地の歴史は古く、北陸地方と近畿地方をつなぎ、京都の玄関口として東海道などの主要街道が通る交通の要衝として発展。宿場町と琵琶湖の物資が集まる港町としての機能を併せ持った大津宿として、江戸時代には様々な物と人が行き交う大津の賑わいぶりは「大津百町」と表現された。
昭和期に入り、中心商業地は現在の大津駅、浜大津駅を結ぶ地区に移る。「菱屋町商店街」では1955年、総工費1000万円をかけて長さ190メートルのアーケード(大津市の商店街では最も早い)を完成させるなど中心商店街は活況を呈していた。その後、におの浜地区などで琵琶湖の埋立てが行われ、75年頃から大型スーパーが進出し始めると、中心商業地はにおの浜地区などにも広がりを見せた。
74年に大津駅前に「平和堂アルプラザ大津」、翌75年には「西友ストアー大津店」が、76年には県下初の百貨店「西武大津ショッピングセンター」が開業するなど大型店舗が次々に出店した。その後も出店は続き、96年には「大津パルコ」が、98年には浜大津駅前に「浜大津オーパ」がそれぞれ開業し、旧来の商店街は徐々に衰退していった。
一方で、これらの大型店舗も近年は大津市と草津市を結ぶ近江大橋の無料化や、より大型の無料駐車場を備えたショッピングセンターへ客足が流れたことによる営業不振で閉店が相次ぎ、「浜大津オーパ」が04年、15年には「平和堂アルプラザ大津」と「西友ストアー大津店」が閉店。そして17年8月末には「大津パルコ」が閉店する。
これらの商業施設跡地には近年、利便性を生かしてマンションが建設されることが多く、その売れ行きも好調であることから、マンション需要が地価上昇をけん引し、現在では「出かける街」という印象は薄れ、「住む街」としての印象が強くなっている。
歴史的資源の活用も
大津市の中心商業地は、昭和期の商店街の衰退や大型スーパーの撤退が見られ、その跡地にマンション建設が進んだ。現在、市では中心商業地を活性化させる取り組みとして、(1)駅・港を結ぶ動線のリニューアルによるにぎわい創出、(2)町家等の活用による複合的都市機能の充実、(3)琵琶湖岸を生かす観光と環境共生のまちづくりを掲げている。琵琶湖岸のカフェの整備や、16年には大津駅のリニューアル工事を実施。商店街では各種イベントの開催や空き店舗の活用も行っている。
大津市の中心商業地には歴史的価値の高い建物も多く、今後はこれらの歴史的な資源を生かした活性化を実現していくことも期待したい。
(日本不動産研究所大津支所、不動産鑑定士・芦川直樹)

























