遮音材の仕様書や住宅の性能表示における透過損失等級などで「デシベル(dB)」という言葉を目にすると思います。デシベルの「ベル」はスコットランド生まれの科学者で、実用的な電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルに由来しています。ベルは発明家としても活躍し、1880年には今日の光通信の元になる「フォトフォン」の実験に成功しています。デシベルの「デシ」の方は数値の使い勝手を良くするためにベルの数値を1/10としたことから「デシ」が付いています。デシリットル(1リットルの1/10)などと同じ表記です。
一般的に静かな図書館が40デジベル、普通の会話が60デジベル、地下鉄車内が100デジベル等とされます。デシベルは対数比によって表されるので、デジベルの数値と実際の音のエネルギーは比例しておらず、図書館の40デジベルと一般的な会話60デジベルは20デジベルの差しかありませんが、音のエネルギーでは10倍の違いがあります。直接的な倍率で音エネルギーを表示すると桁数が非常に大きくなるため、感覚的に比較しやすい数値にするために対数比が使われます。また、デシベルは絶対値を表すのではなく相対値を表しており、0デジベルとはゼロではなく1倍(100%)を意味しています。
音は気体や個体、液体の振動として伝わり、そのエネルギーの大きさがデシベルと言えます。したがって真空中では音の伝播は起きません。良くSFモノのビデオなどで、巨大な宇宙船が轟音を立てながら宇宙空間を飛翔するシーンなどありますが、科学的には全くの嘘ということになります。
また、音エネルギーは波として考えられ、その波の周期が重なれば津波のような大きなエネルギーになり、波の周期が逆になって打ち消し合えばエネルギーは減衰します。この原理を利用したのがノイズキャンセラーイアフォンやヘッドフォンで、電気的に外部騒音と逆位相のエネルギーを振動板に与えることでノイズをカットする仕組みです。
大事な遮音設計
音のエネルギーを何らかの方法で減少させることが遮音です。一般的には音のエネルギー(音波)を別の物体を通過させると、音エネルギーは熱エネルギーに変換され減衰します。通過させる物質は密度が高いほど音エネルギーを吸収しやすく、性能の良い遮音材です。遮音設計における透過損失TL(Transmission Loss)とは界壁を隔てた音源からの音がどの程度小さくなったかで表し、単位はデジベルです。入射音と透過音の差が透過損失です。例えば石膏ボードのように重量のある壁材で136ミリ程度の界壁を構成した場合、80デジベルの入射音に対し透過音は26デジベルとなり、透過損失TLは54デジベルとなります。
遮音性能の評価尺度として「遮音等級(D値)」が決められています。音はその周波数で透過する割合が異なり、低いほど透過しやすく高いほど透過しにくい性質があります。そこで評価では125、250、500、1000、2000、4000ヘルツの6帯域測定を行い、D値は中心周波数500ヘルツ時の透過損失としています。実際の遮音設計ではTLの他にTLDを参照して仕様を決めます。
TLDとは音響試験室などで測定された遮音壁単体の遮音性能(音響透過損失)を表します。また、現実には建築物では音の回り込みも考慮する必要があり、最終的な遮音設計は「D値=TLD値-音の回り込みその他低減値の合計」によって決定します。
(建築家・中村義平二)























