老後に備える 資産をどう生かすか (上) 住み続けながら自宅を売却
住宅新報 2017年4月11日 号 1面

年齢別持ち家世帯率
老後に不安を抱く人が増えている。長寿化で、これまでに蓄えた預金や年金だけでは生活資金として心許ないと感じているからだ。そこで、自宅など所有している不動産を有効活用する方法が注目を集めている。一方、認知症などで判断能力が落ちる前に、老後資金や医療、介護費用などの算段を家族と一緒に話し合っておきたいというニーズも高まってきた。「豊かな老後をサポートする」という発想が、不動産事業者の新たなビジネスを育てようとしている。
高い持ち家率
幸いなことに、日本は高齢者の持ち家率が高い。年齢別の持ち家世帯率(グラフ)を見ると、30代で大きく上昇し、40代前半には5割を超える。そして、65歳以上では約8割の人が家を所有している。
これを金融資産化することで老後の生活資金に充てる方法が登場している。相続について、必ずしも子供に資産として残す必要はないと考える親が増えていることも背景にある。
では、自宅を金融資産化する場合の選択肢にはどういうものがあるのか。単純に売却して売却代金を得る、貸し出して賃料収入を得る方法が考えられるが、いずれも自宅に住み続けることはできなくなるのが欠点だ。そこで、ハウスドゥ(安藤正弘社長)は、高齢者が自宅に住みながらその家を売却できるサービス「ハウス・リースバック」を始めた。
定期借家権を活用
売却希望者から市場価格の7~8割で買い取り、その後、売主に3年間の定期借家契約で賃貸する。同社は安定収益となる賃貸収入を得ることを目的としているため、退去や滞納などが起こらない限り転売はしない。3年後の契約期間終了後も基本的には再契約する。売主が将来買い戻すことも可能という。
3年前から本格的にスタートし、保有件数は274件で、保有総額は45億円規模に達している(16年6月時点)。同社執行役員の冨永正英氏は、「当初に計画していた以上のスピードで進んでいる。利用者の半数以上が50歳以上で老後の生活資金を補填する目的が多い」と需要の盛り上がりを実感している様子だ。
利用者のニーズとしてはそのほか、「相続が発生した時に、分割しやすいように現金化しておきたい」「急に高額な医療費が必要になり、家を売却するしかないが、子供の通学を考えると転居はしたくない」といったケースもあった。
不動産会社の仕事
高齢者を対象にした自宅の金融資産化ビジネスとしては、従来からリバースモーゲージが知られている。持ち家を担保として銀行から生活資金の融資を受け、住宅所有者である本人が死亡した時に売却して一括返済する仕組みだ。 しかし、リバースモーゲージは金融機関のビジネス。その点、リースバックはあくまでも不動産取引だから不動産会社の新たなビジネスに発展する可能性がある。
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フランスに古くからある「ヴィアジェ」も不動産取引の一形態。これが、今後高齢化が進む日本で普及する可能性があるとの見方も出てきた。高齢者が自宅を売却し、住み続けながらその代金を分割して死ぬまで年金的に受け取るというもの。最大の特徴は、買い主は平均余命などから割り出した分割代金を高齢者が亡くなるまで払い続ける契約になっていることだ。平均以上に長生きすれば買い手は損をするが、逆に早く亡くなった場合には得をする。
この点が射幸性が高いと見られ、これまで日本では普及しなかった要因といわれている。しかし、高齢者側にリスクはない。予想以上に早く亡くなったとしても、本人はもうこの世にいないのだから。それより何より、死ぬまで年金的にもらえる資金があることは高齢者にとって大きな魅力である。
つまり、事業者側のリスクさえカバーする方法があれば、ヴィアジェは大きく普及する可能性を秘めている。その一つとして検討されているのが買い手としてのファンドを組成し、リスクを複数の投資家に分担してもらう方法だ。超高齢社会に突入する日本で〝日本版ヴィアジェ〟を普及させることができれば、世界が注目する不動産取引となる。(井川弘子)






















