西欧の建築デザインはいつの時代も様式から自由ではありませんでした。古い時代であれば様式は施主である王や支配階級、富豪の権力や富を象徴するための重要な手立てであり、建築家(古い時代は「工事親方」)はいかに様式の種類を多岐にわたって熟知しているか、様式の再現性に優れているかが、能力の指標でした。市民階級が発注の主体となった近代建築でも、様式の呪縛から逃れることはなく、現代まで建築デザインは様式やスタイルから無縁ではありません。
例えば、オリンピック競技場のデザインで一躍日本で名が売れ、自由奔放に見える故ザハ・ハディドのデザインにしても様式的には「SFコミックス」と呼ばれ、類似のデザインはハディド以外にも多数存在します。
近代の西欧デザインの源流は市民階級が力をつけた17世紀のピューリタン革命(英国)やフランス革命以降で、最初に最も大きな様式を作り出したのは英国のアーツ&クラフツ運動です。これは、産業革命以降の大量生産品が粗悪な古典の模倣品であったことに異を唱えた運動で、手仕事の持つ人間的で温かいデザインの復興を目指したものでした。もちろん、工業製品を否定するのではなく、その時代にふさわしい様式を目指した運動でした。柔らかい植物柄や蔓、幾何学形態をモチーフに、そのデザインは建築から家具、壁紙、織物、本の装丁まで及びました。























