一般財団法人日本不動産研究所 地域再生とまちづくり ――各都市が目指すものは <第18回> 奈良県大和郡山市・金魚が泳ぐ城下町の再生 郡山城跡の整備進む 官民協力で魅力発信
住宅新報 2016年10月4日 号 24面
金魚の町
大和郡山市は奈良県北部に位置し、柳澤吉里が甲府から15万石で入城した1724(享保9)年以降明治まで柳沢藩の城下町として栄えた。最近は金魚の町として有名で、毎年8月の全国金魚すくい選手権大会には全国から参加者が集まり、町おこしの一端を担っている。金魚養殖の歴史は、柳澤入城に始まると伝えられている。
幕末には藩士の副業として、明治後は職禄を失った藩士や農家の副業として金魚養殖が盛んに行われるようになったが、歴史的背景に加え、水質、水利に恵まれた農業用溜池が多くあり、溜池に発生するミジンコ類が稚魚の餌に適していた――などの条件が満たされていたためである。
今でも養殖農家約50戸、養殖面積約60ヘクタール、年間約6000万匹の金魚が販売されており、毎年4月には柳澤神社で金魚品評会が開催され、愛好家が全国から集まる。また、地元の柳町商店街では観光客の誘致を図り、町の賑わいを取り戻そうと、金魚が泳ぐ電話ボックスや自動販売機を設置し、商店街を挙げて金魚の町のまちづくりを推進している。
郡山城は大和で最も大規模な城郭で、近世期には豊臣、水野、松平、本多、柳澤家の居城となっていた。城は内堀、中堀、外堀の三重の堀囲まれた惣堀(そうぼり)の構えを持ち、この中に城郭の中心部や武家屋敷、城下町が配置されている。
「明日のお城と城下町を考える会」などの市民運動により、築城当時に近い形で1983年に追手門(梅林門)が復元され、続いて追手向櫓、多聞櫓、追手東隅櫓が87年にかけて再建された。現在も市により郡山城天守台の石垣修復や展望施設整備事業が17年3月完成を目指して進行しており、官民一体の郡山城再生が行われている。
「箱本十三町」散策
郡山城跡の東側に広がる、近鉄郡山駅とJR郡山駅に挟まれた地区は今も城下町の風情を残している。豊臣秀長が奈良や堺の商人たちを呼び寄せ、地租免除や商売上の特権を与えた自治組織が箱本十三町である。紺屋町には資料館となっている箱本館「紺屋」(元藍染商)や染め上げた布・糸をさらしていた紺屋川が現存し、奈良町、堺町、茶町、雑穀町、綿町など、当時の商人の出身地や職種が町名に面影を残している。
また、中村邸(元造り酒屋)、花内屋(元旅籠)、和田徳(元呉服屋)、旧川本邸といった町家も多く、東岡町には昔の遊郭跡の木造3階建て建物も見られる地区もあり、城下町の色々な側面が混在している。
散策には、箱本十三町観光案内所が開設され、「城下町ぶらっとマップ」などの案内図も充実している。大和郡山市観光協会や大和郡山市の協力体制のもと、城下町を観光資源とし、官民が協力してまちづくりを進めている。
今後も官民が協力し、金魚が泳ぐ城下町の魅力を発信してまちづくりを進めていけば、人口減少に歯止めがかかり、商業地の活性化も進み、奈良県北部を通る予定であるリニア新幹線誘致に向けて、強力なアピール材料となるのではないだろうか。
(日本不動産研究所奈良支所、不動産鑑定士・内田佳宏)


























