一般財団法人日本不動産研究所 地域再生とまちづくり ――各都市が目指すものは <第16回> 岡山県倉敷市・水島地区の構造転換が重要課題 高梁川流域圏ビジョン 連携して成長模索
住宅新報 2016年9月20日 号 18面
新産業都市の優等生
倉敷市は、岡山県の南部に位置し、水島臨海工業地帯を擁し、石油化学コンビナートに代表される重化学工業の都市で昭和期は「新産業都市の優等生」と讃えられ発展を続けてきた。その後、国内市場の成熟化と産業構造の変化に合わせて海外との競争力確保のため設備の集約、廃棄、転換を進め、新しい水島臨海工業地帯へ脱皮を図っている。エネルギー系では、水素が石油精製の副産物として大量に製造されており、これを活用すべく、自動車で注目されている「水素」エネルギーへ対象を広げ倉敷市が中心となって、県内では初となる水素ステーション整備を進め、17年春の稼働を目指している。
市税収で水島は過去、鉄鋼や自動車生産の好調にけん引され、雇用面でも大きな貢献を果たしてきたが、近年の国際的な産業構造の変化でその依存度は長く低下傾向にあるなど、構造転換は重要な問題でもある。市の枢要な税収を支えている水島地区の今後の発展いかんが倉敷市の盛衰を支える大きな源でもある。一方で、密接に連携してきた中小工場があり、後継者や資金難など、転換は容易ではないまま推移している。
人口は約48万人。市域は平成の大合併で拡大し、過疎高齢化も他市に比べそのエリアは狭いものの、中心市街地への指向性が強まっている中で、山間部や高台地区を抱え、課題は多い。
全国に先駆けて「連携中枢都市圏」として、倉敷市を拠点都市に関係9自治体の合計10団体からなる「高梁川流域圏」が結成され、14年に経済成長や文化発信を目指す国のモデル事業として採択された。高梁川流域7市3町村は倉敷のほか、笠岡、新見、高梁、総社、井原、浅口の各市と早島、矢掛、里庄の各町である。笠岡市は島嶼部を抱え、典型的な過疎高齢化の問題を有している。県北の新見市、その南の高梁市、井原市も同様に過疎高齢化は深刻である。一方で早島町は大都市部に挟まれ人口は微増状態であるなど自治体で幾分特色がある。
倉敷市の人口は微増、横ばいだが、多くの団体は過疎と高齢化が深刻な中山間地を抱えている。連携する取り組みとして、(1)圏域全体の経済成長のけん引(経済戦略、企業誘致、観光振興など)、(2)高次の都市機能の集積・強化(高度医療の提供、中心拠点整備、広域交通網の整備)、(3)圏域全体の生活関連機能サービスの向上(生活機能の強化策、ネットワーク強化など)が掲げられている。
5年間で成果検証
策定した「高梁川流域圏成長戦略ビジョン」では「15年度から5年間を1区切り」とし、一定の政策効果の検証を求めている。不動産と関わりのあるインフラ関連では、倉敷市の東岸と船穂町をつなぐ「倉敷大橋」が16年1月に開通し、東西の交通軸が新しく生まれたほか、JR倉敷駅周辺連続立体交差(鉄道高架)事業の推進がある。
3つの取り組みは、いずれも愁眉の課題解決と言える内容で、長く続く財政難の中で、自治体単独ではなかなか踏み出せない内容をこの試みで実現したいとの意気込みが見える。だが、具体的戦術となると様々な利害や調整が求められ、理想論だけではうまく進まないだけに中心となる倉敷市のリーダーシップが大きな鍵となっていくだろう。いずれも財源を中期にわたってどう準備し、それぞれの自治体のコンセンサスをどう得ていくかにかかっていることは明らかである。
(日本不動産研究所岡山支所、不動産鑑定士・栗岡義則)
























