古い倉庫や工場には赤煉瓦が多く使われており、風雪に耐えた質感や色合いは独特の美しさを見せます。また、地方の醸造元などを訪ねると工場や倉庫、塀、煙突などに煉瓦が使われ、風情のある景観を造り出しています。
ヨーロッパに伝えられた煉瓦はローマ時代から使われ、遺跡には煉瓦構造を多く見ることができます。クラシックな石積みのように見えるヨーロッパの街並みですが、中身の構造体は煉瓦積みで、表面に石を張ったり、モルタルで塗り固め石積み風の模様を施したものが少なくありません。
煉瓦のサイズはローマ時代からそれほど大きく変化せず、日本のJISで普通煉瓦は210ミリ×100ミリ×60ミリと規定されています。このサイズを「全形」と呼び、縦に半分にしたのが「ようかん」、横に半分にしたのが「半ます」です。また、長い断面を「長手(ながて)」、短い断面を「小口(こぐち)」と言います。建築用煉瓦は3尺などのモジュールに合わせるため長手が225ミリや300ミリなどが使われます。
明治から大正に掛けて建てられた西洋館には煉瓦が多用されましたが、大正12年に起きた関東大震災(震度7)では煉瓦を使った建物が大きな被害を受けたことから、組積造への信頼が揺らぎ、以降煉瓦造の建物は激減しました。筆者もかつて鹿児島の火山灰「しらす」を焼成して造った煉瓦を使う組積造住宅の開発に携わりました。しかし、38条大臣認定は取れても組積造に対するクライアントの不信感は大きく、残念ながら商品化は見送らざるを得ませんでした。
煉瓦造は遠目に見ればさほど表情の違いはありませんが近目で見ると、目地の違いでかなり質感が異なります。組積造の基本は「芋目地」を造らないことです。芋目地とは縦に目地が通っているような積み方で、荷重が目地に沿って流れるため、破損しやすく小さな揺れでも容易に倒壊します。一方、縦に通らない目地を「破れ目地」といい、組積造では必須の目地です。煉瓦を多く使うイギリス、ドイツ、フランドル(ベルギー)では独特に積み方が発展し、それぞれイギリス積み、ドイツ積み、フランドル積みと呼ばれます(右図参照)。
イギリス積みは堅固な積み方で構造的に最も強い積み方、フランドル積みは表面の目地模様が美しく意匠性に優れますが、内部で芋目地が発生するため構造的にはやや劣ります。ドイツ積みは小口積みとも呼ばれ、表面には几帳面に小口のみが現れます。日本の洋風建築ではフランドル積みとイギリス積みが多く見られます。
(建築家・中村義平二)























