明らかにおかしいと思えるのに、現実にはなかなか改善されないことが社会には多い。高齢者の住まいもそうだ。いまだに有料老人ホームもサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)も、高齢者を一カ所に集める発想から抜け出せていない。 年を取ったからといって、介護が必要になったからといって、罪を犯したわけでもないのにどうして集合生活を強いられるのか。明らかに差別である。犯罪者どころか、高齢者は社会に貢献してきた人たちである。
隔離は差別
子供を育てる責任は社会にもあるように、高齢者を最期までやさしく見守る責任が社会にはある。体が動かなくなった人がいればサポートし、元気づけながら日常生活に復帰させようと試みるのが、普通の人間の正常な感覚である。高齢者を一カ所に集めるのは、サービスを効率化したいという思いが強いからだ。高齢者を、人格を持った人間ではなくモノと化している。
サ高住が、本人はもちろん、60歳以上でなければ兄弟や子供が一緒に入居できないのもおかしな話である。配偶者は60歳未満でも同居可能だが、要介護の高齢者は既に配偶者を亡くしているケースが大半だろう。
同居者にこのような入居条件がある限り、例えばこれまで親の介護をしながら一緒に暮らしてきた60歳未満の子供が、親の介護度が重くなったのを機に、サービスが受けられるサ高住に一緒に転居しようとしても叶えられない。なにゆえに親子をわざわざ引き離すのだろうか。
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もちろん、サ高住も徐々に〝進化〟してきてはいる。最近の傾向として挙げられるのが、一般分譲マンションとの一体開発である。今年に入ってからは、NTT都市開発、東京建物、東急不動産などからのプロジェクト発表が相次いだ(1面参照)。
こうした一体型開発には〝時〟を経るにつれて、サ高住と分譲マンションの居住者同士の交流が進むことや、それぞれに親世帯と子世帯が住む〝近居〟を促すことなどへの期待がある。
中でもNTT都市開発のプロジェクトは、サ高住と分譲マンションの運営・管理会社が共に同社の子会社となるため、サービス面でも一体化を図っているのが特徴だ。
例えば、千葉県船橋市で昨年3月にオープンしたサ高住「ウエリスオリーブ津田沼」は、隣接する同社の分譲マンションに入居する高齢者に対しても生活支援サービスを提供することができる。
こうした仕組みを設けることで、高齢者は元気なときから介護スタッフとの交流を持つことになるため将来、サ高住に転居したとしても、〝隔離〟されたという感じは生まれない。また、オリーブ津田沼内には外部の人も利用できるレストラン(写真)もあり、地域とのつながりにも配慮している。
量よりも質
国は、新たに閣議決定した新住生活基本計画で、高齢者が日常生活圏で介護・医療、生活支援サービスを受けることができる居住環境の実現を主要目標としている。
量的には高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を14年の2.1%から25年には4%に拡大する計画だ。ただ、大事なことはあくまでも高齢者住宅の〝質〟である。高齢者のQOL(生活の質)を向上させるためには、高齢者の心の研究が欠かせないと前号で述べた。人の生活は、心を地盤にしたものだからである。
そう考えると、70歳にもなっていない人たちが、平均入居年齢が80歳を超えているサ高住を企画しているのもおかしな話だ。
女性向けアパートは、若い女性社員が企画設計して成功しているのだから、サ高住も70、80代の人の意見を積極的に取り入れるべきではないだろうか。人生をより多く経験している高齢者を敬う気持ちが社会を豊かにする。 (本多信博)























