建築費融資の 課題と解決策 エスクローファイナンス社長須田幸生 ◇下 ABL発注者、建設会社双方にメリット
住宅新報 2016年3月22日 号 3面
連載: 建築費融資の課題と解決策
〈建設会社に資金融資〉
工事期間中、建設会社が事業資金を調達するには、経済産業省が産業金融活性化を目的として普及促進を目指している「ABL」(動産・債権等担保融資)の活用が考えられる。
債権を担保に
建設会社は、工事発注者との間で締結する建築請負契約に基づいて、工事完成時に請負代金を請求する権利(請負代金債権)を持っているが、この債権を担保とした融資がABLだ。
ABLを活用することにより、過去の財務状況や不動産担保に依存せずに資金調達することが可能になる。
【ABL活用の条件】
(1)発注者の与信
工事受注時には、発注者の請負代金支払い能力の確認が必要。個人からの受注の場合には住宅ローンやアパートローンの融資承諾書の確認、不動産会社からの受注の場合には調査会社のデータや、実績や販売状況などのヒアリングなどで判断することとなる。
(2)債権譲渡
ABLでは、請負代金請求権という債権が唯一の担保となり、保全にあたり、請負代金債権の譲渡(譲渡担保)についての発注者からの承諾が必要となる。
建設会社がABLを活用することにより、発注者は工事完成後に請負代金を支払えばよいことになるので、理解は得やすいと思う(ただし、ほとんどの公共工事の場合は債権譲渡が禁止されているので注意が必要)。
(3)完成保証
万が一、工事が途中でストップしてしまった場合に備えて工事完成保証の手続きをすることになる。これは、工事発注者への安心感にもつながるので、竣工後一括払いのメリットと併せて受注促進にもつながる。
出来高に応じて調達
【ABLの活用事例と可能 性】
これまで、個人発注の注文住宅やアパート・マンションの建築資金、ディベロッパー発注の建て売り住宅や収益物件の建築資金などでの活用事例がある。
建設会社は、工事の出来高に応じ、請負金額に対して、例えば基礎配筋完了時・上棟時・中間時に10%・20%(累計30%)・30%(累計60%)のような割合で資金を調達し、資材の購入代金や下請け業者への支払いに充当する。
発注者にとっては、工事が完成して、建物が担保提供できるようになった段階で工事代金を支払えばよいことになるので、工事期間中の資金調達が不要となる。
建設会社にとっては、ABLにより計画的な資金繰りが可能となり、発注者に対しても、工事完了後一括払いのメリットをアピールすることで受注促進につながる。
ABLは発注者・建設会社双方にメリットのあるスキームであり、更なる活用が期待される。
すだ・さちお=73年生まれ。福島県福島市出身。福島大学を卒業後、投資用マンションディベロッパー(人事、財務および経営企画)、コンサルティング会社(企業再建、アセットマネジメント)を経て09年9月にエスクローファイナンス(株)を設立。建設会社向け事業資金融資やディベロッパー向けプロジェクトファイナンスを行う。全国住宅産業協会戸建住宅委員会副委員長。


























