明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第113回 神田神保町のビルの階高 歴史を刻む個性的な街並み
住宅新報 2015年12月15日 号 4面
【学生の目】
東京都千代田区神田神保町を歩いた際に、隣り合うビルの階数の違いに違和感を覚えた。6階建ての隣が2階建てで、両側は新しそうな9階建てと古そうな5階建てだ(写真)。いくら建築は自由とはいっても何らかの理由があるはずだ。
調べてみると古そうなビルは1931年完成で、新築後84年経過していて、本当に古い。1階の階高が高く、ファサードも整っていて経年ほど古くは見えない。重厚感があり、地域の価値の向上に貢献している。建築時期からして松杭と思われるが、地盤面は回りよりも一段高く保たれ、しっかりと支えられている。戦災の火災被害を受けなかった地域に残る、歴史的な遺産である。
各敷地の基準容積率は700%だから、右側の9階建てが現在の土地利用からみた最有効使用ビルといえる。直通階段を1カ所で済ませるために、屋外避難階段と避難用のバルコニーの組み合わせを採用している。重厚感があるとはいえないが、容積率と有効率を重視して建築している。
最も不思議なのは中高層ビルが立ち並ぶ中にある2階建てだ。外観的に統一感がないだけでなく、合理的な理由が思いつかない。調べると、72年改正の東京都の建築安全条例が「三階建以上の建築物の敷地は、道路に4メートル以上接しなければならない」と規定している。この敷地は、間口にかけられる税金(間口税)を避けようと、間口を狭くした頃の名残をとどめていて(2間(約3.6メートル))、高度経済成長期の建築制限を受けた。規定は93年に廃止されたから、この間の建物だけが受ける制約だ。これも歴史の遺物といえる。この土地の固定資産税は果たして歴史上の経緯を踏まえて課税されているのか、新たな疑問がわいた。
公図と土地登記簿で確認すると、6階建てのビルは敷地の一部に区分地上権が設定され、地下鉄が通っている(小野史奈「不動産の不思議第109回」15年11月17日号)。区分地上権設定に伴い、建築可能な建築物等の重さは1m2当たり10トンまでに制限されているから、この敷地はこの建て方が限界である。
古本屋街に古い建築物や歴史を物語る建築物が立地することは興味深い。戦災を免れたことが個性的な街の背景にある。現行法に照らせば余剰容積があり、建て替え圧力もあると思われるが、調べてみたくなる個性のある街の歴史を維持し続けて欲しい。 (森田愛理 不動産学部4年)
【教員のコメント】
建築重量を各階1m2当たり2トンとすると、1m2当たり10トンの制限では5層しか建築できない。鉄骨造として軽量気泡コンクリートを使い、階高を低くして軽量化し階数を稼ぐと建物グレードが下がる。地下室を造ると摩擦杭の長さの制約が一層大きくなる。
























