最近の設計案件ではアイランドキッチンが当たり前です。施主の奥様にメリットやデメリットを説明してもアイランドキッチンありきで、聞く耳を持っていません。
戦後のキッチンの歴史を見ると、まず文化住宅と呼ばれる長屋式の集合住宅が建てられ、台所にはガス台と蛇口の付いた流しが設置され、脇には氷式の冷蔵庫が鎮座していました。その後、住宅不足を補うため公団住宅が大量に建設されましたが、ここでは「寝食分離」が唱えられ、食の独立性が初めて確保されました。具体的には茶の間、居間の一部に三点式(ガス台・調理台・流し)のキッチンセットが設けられたのです。
長らくこの三点式の時代が続きましたが、高度成長期に入ると三点セットの欠点である天板の隙間をなくしたシステムキッチンが台頭。ハウスメーカーは販促アイテムとして最適なシステムキッチンを導入し、奥様方の憧れをあおるような広告を大量に発信しました。
システムキッチンは1900年の初頭にドイツで開発され、ヨーロッパに普及しましたが、ドイツにおける「システム」の意味はメーカー間を横断的につなぎ、A社の収納ボックスにB社の扉を取り付けることが可能なように、厳密にモジュールが決められたものでした。しかし、日本のシステムキッチンは単に天板が一体的につながっているものを意味し、自社内でもシリーズが異なれば互換性がないというシステムでした。
システムキッチンのバリエーションとしてメーカーが提案したのが「対面型キッチン」です。うたい文句は「家族との会話を楽しみながらキッチン作業ができ、主婦が孤立化しない」というもので「カウンターで簡単な食事もできる」というメリットも訴求されていました。実際には刃物を使ったり高温の鍋や油を使うキッチン作業で会話を楽しむことはかなり難しく、ラーメン屋のようなカウンターは2~3回食事をした後は格好の物置き場になり、熱帯魚の水槽などが置かれていました。
キッチンメーカーやハウスメーカーが次なるバリエーションとして繰り出したのがアイランドキッチンです。厳密にはシンクやレンジ、調理台が壁から島のように離れているのがアイランドキッチンですが、ハウスメーカー等では対面型キッチンの壁を取り払い、天板を大きくしたものをアイランドキッチンと呼んでいます。正確にはペニンシュラ(半島)型キッチンです。
さて、キッチンの今後ですが半完成品の食材を多用する、食の変化を見ると、いつまでもリビングの一部に大きなキッチンが鎮座する必要はなく、壁面に埋め込まれて扉で隠せる「ブラインド・キッチン」のようなものが現れてきそうです。 (建築家・中村義平二)























